インベンション。

□現代与太話
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オレはライ。
公立召喚高等学校に通う15才だ。

何処にでもいるような高校生のオレだけど、最近はちょっと…いやいや、かなり困ったことがあって悩んでいる。
その悩みっていうのは一般でいえば色恋沙汰に入ると思う。
…ただし、色恋の中では特殊な例だ。

二週間前、告白された。それも同性に。

まさか自分が同性に好かれるなんて、生まれてから今まで考えたこともなかった。
そもそも学生の身分では、恋や愛などに現を抜かしている場合じゃなくて。
家庭の事情で奨学金を借りつつ高校に通い、生活費を稼ぐ為に青春の日々をバイトに費やすオレとしては尚のことだ。

だからオレは相手に言った。
『忙しいから他を当たってください』
しっかり頭も下げて、丁重に断った。

でも相手は簡単に引き下がる奴じゃなかったみたいで。
オマケに、とてつもなく強引な奴で。

『そうか。では暇なときに、また尋ねよう』

眩しいくらいの笑顔でそう言って、いつの間にか掴んでいたオレの手の甲にキスをひとつ、落としたのだ。
他人に告白されるのも初めてだったオレはこの出来事に絶句するしかない。
頭は真っ白で、思考は停止。
しかもオレが無抵抗なのを良いことに、相手は更に、頬にもキスをして帰っていった。

それから、というもの。
いきなりオレに愛を囁いてきた男――セイロンは頻繁にオレの家を訪れるようになった。

酷い雨の日でも。
風の強い日でも。
セイロンは関係なく来る。

事前に一言の連絡もなく、オレの知り合いがいようがお構いなしにやってきて、オレに「今日も愛いことだ」などと抜かす。
おかげで、親しい友人には冷やかしのネタを握られ。酷い時には、セイロンは“恋人”にされていたりする。
オレは一言も「付き合っている」なんて、言った憶えはないのに。

これは十中八九、恋仲関係を「違う」と否定しながら、大した抵抗もせずにセイロンを家へ上げるオレが悪いのだろう。

…でも、さ。
仕方ないんだ。

以前に居留守を使ったら、セイロンはオレが出るまでずっと玄関前にいた。
シャンと背筋を伸ばして。
目線はずっと門のほうに向けて。
その手に大きな花束まで持っていて。
オレが根負けして玄関を開けるまで、そうしてオレのことをずっと待っていた。

どうやらセイロンにはオレに一目会うまで帰らない、という強い意志があるみたいで。
だからオレは、どうしてもセイロンに会わなくちゃいけない。

「ライさん、それって典型的なストーカーだよ…」

「そーよ!アイツはぜったいに悪人よ!!」

「そうか?」

告白されたけど初対面で名前も知らない。
平日なのに昼間からフラフラしている。

誰の目から見ても、セイロンは怪しい男だ。オレの目から見たってそうとしか見えない。
…でも、セイロンは悪い奴ではないと思う。
言葉は上目線で偉そうだけど、本当は誰のことも馬鹿になんかしていないのだ。

接する機会が増えたせいで、色々とセイロンに関しては少し詳しくなった。
性格の他にも、コーヒーよりも緑茶が好きとか。洋食よりも和食が好きで、その中でも一番好きなオカズは鯖の味噌煮とか。

「えーと、他には…」

「アンタね……付き合ってないとか言いながらノロケてんじゃないの!」

「は?!これは惚気じゃなくて…」

「ライさん、それはノロケだと僕も思うよ」

「え!?」

ブロンクス姉弟が揃って深刻そうな表情で溜息をついた。
…絆されている。
あの怪しいストーカー男は、見事なまでにこの警戒心の強い少年を絆したのか。

二人が幼馴染の未来を案じているなか、雰囲気にそぐわない軽快な呼び出しの音が響く。
それを鳴らすのが誰なのか。
ライの嬉々とした表情を見た後では、もはや考えるまでもなかった。









現代パロとは別物で、現代話を書いてみたら、始まりからツッコミ処満載に。
…これぞ与太話か。

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