diary SS

□02/25〜09/26
12ページ/14ページ

**

「これからコンビニ行くけどさ、新八っつぁん何か食べたいものとかある?」
「コンビニ?えーっと、……」
「新八っつぁん?」
「思いつかないから俺も行く」

思いがけない新八っつぁんの発言で、深夜のデートになった。
場所は近所のコンビニ。
歩いて10分。

「うわー新八っつぁん!星すっごいよ!」
「ん?おー」

ふと見上げた空には沢山の星。
ため息が出るほどってよく言うけど、本当に綺麗な星空だった。

「俺、こんなに綺麗な星空見たの久しぶりだわ…」
「新八っつぁん?」
「と、いうか。空見上げた事自体久しぶりかも」

新八っつぁんを見ると、まだ空を見上げている。
首、痛くならないのかな…。
見ていると新八っつぁんの体がグラリと、

「おわっ」
「ちょ、危な!」

重力に逆らわずに新八っつぁんは後ろに倒れそうになる。
それを俺が受け止めた。

「新八っつぁん、星を見上げるのはいいけど重力ってものを考えてよ」
「わりーわりー。いや、月がないなーと思って」
「え?」

新八っつぁんは俺に寄りかかったまま笑って、また星に目を向けた。
俺も上を向く。
そういえば、月がない。

「月、ないね。月がないからこんなに星がきれいなのかな」
「…かもネ」

新八っつぁんはまだ俺に体を預けてる。
俺は新八っつぁんを抱きしめてる。
目線を感じて下を向くと、新八っつぁんと目があって、
新八っつぁんが笑った。

「……」
「…何ヨ」
「なんでも?コンビニいこ」

新八っつぁんに笑いかけて俺は歩き出す。
口づけた唇が冷えていたから、手を繋いで。
冷たい彼の手がきゅっと俺の手を掴んだから、
俺の手は、心は、少しだけ暖かくなる。

二人の足音だけが小さく響いた星の綺麗な夜だった。



****
09/26
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ