diary SS

□02/25〜09/26
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「ねぇ新八っつぁん」

突発的に声をかけていて、それは無意識だったもんだから

「ん?」

呼ばれて振り返った彼に、かける言葉が見つからなかった。
これも無意識に出した手が俺と彼の間をふらふらしていて、

「…何ヨ」

手も声も出さぬ俺に新八っつぁんは、手と俺とを交互に見て不思議そうに言った。

「あ、っと…。何言おうとしたか忘れた」
「はぁ?」

へへっと笑う俺に、ため息混じりの苦笑い。
そしてまた止まっていた二人の足が動き出す。
上を向くとぽっかりとお月様。地平線には沈み欠けた太陽。
大きく息を吐くと、その間に白いもや。

「寒いのわかってんだからやめろよ。倍寒いだろ」
「あぁごめん」
「ったくほら、帰るよ早く」
「え?あ、え?」

気づいたら、新八っつぁんに手を取られ引っ張られていた。
ごく当たり前のように。

「ふらふらって迷子になられちゃ困るんだよ、平助じいさん」
「じいさんって」
「お前が迷子になったら探すの誰だと思ってんの。俺の仕事増やさないでくんない?」
「え、探してくれるの?」
「あったりまえでショ、保護者なんだから。意地でも探し出してやるからネ」
「…」
「あと、左之助の暑苦しい抱擁が待ってる」
「…あ…それはものすごく嫌だな」

くすくす笑って、空を見上げて。
握ってる手が暖かくて。
何でこの人はいつもこんなに温かくて、優しいんだろう。

「新八っつぁん」
「ん?」
「もし俺がいなくなっても探さなくていいよ」
「は?」
「ちゃんと、帰ってくるから」
「本当かよ」
「ぜぇーったい、約束するよ」

例えそれがどんな形だとしても。
この手が届く所にいたいから。
貴方をこの手で守りたいから。




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