diary SS

□02/25〜09/26
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大体いつも押し倒すのは俺で。
倒した反動で流れる髪を掻き上げて、額に唇を落としたり。
軽く乱れた着物を少しだけ割って、首筋や鎖骨を愛撫したり。
その行為をいつも新八っつぁんは受け入れる。
俺の着物を掴んだり、首に腕を絡めたりしてくる。
そうして俺らは愛する行為を進めていくんだ。
けれども。

「し、ん、ぱっつぁん?」

何故か今日は俺が押し倒されていた。
俺の上に馬乗りになって、彼の手は俺のすぐ横にある。
いつもは開いた顔も、今日は流れ落ちた髪で影を作っていた。
新八っつぁんは微動だにせずに俺を見ていて、
俺も彼を見続けた。お互い動かず見つめ合う。
新八っつぁんが大きく見える。
影のせいで表情がよく見えない。
大きな瞳はやけにはっきり見えるけど。

あぁ彼はいつもこんな風に俺を見ていたんだ…

そう思った。
立場逆転だけども、不思議な感覚。
胸がドキドキした。
見下ろす時とまた違った感覚が襲う。
すっと新八っつぁんの手が動いてドキリとした。
その手はゆっくり俺の片頬に触れる。
俺も手を伸ばして彼の両頬に触れた。
指で撫でて、手の平で包むように触れて。
手をゆっくり下ろして首筋を撫でて。
首に腕を回すと、新八っつぁんは俺の上に体を乗せてきた。
きゅっと、俺にしがみつくから。
俺も彼を抱きしめる。

「新八っつぁん?」
「お前…」
「ん?」
「いつもこんな感じで俺を見てたんだネ」
「…」

気持ちを読まれたのか、それとも気持ちが伝わったのか。
考えていたことが一緒だった事に俺は嬉しくなって。
新八っつぁんを抱きしめたまま「うん」と頷いて、
唇を合わせた。


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03/23
「視界の先」
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