diary SS

□02/25〜09/26
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「うわ!」
「平助体重かけんなよ!」
「だって左之助が!」
「もっとこっちこねぇと入んねーよ!」
「元から入らねぇだろ!」

俺と左之助に挟まれてる新八っつぁんが苦しそうで。
わかってるはずの左之助が、笑いながらぎゅうぎゅう腕に力を入れる。
俺は新八っつぁんを抱きしめて、新八っつぁんは俺の腕の中で暴れてる。
ぎゃあぎゃあ俺たちは騒いでた。
雨が降ってる事も忘れるくらい。

「あーもー苦しいってば!」
「あ、じゃぁこうすればいいんじゃない?」

そういって俺は新八っつぁんを抱きしめたままクルリと左之助に背を向けた。
お互い態勢を崩して新八っつぁんは俺に、俺は左之助に倒れ込む。

「これなら三人入るっしょ!」
「元から入ってないデショ…あーでも楽」
「これじゃ平助が一番濡れねぇな」
「お前ら誰の傘だと思ってんの」
「「新八っつぁーん」」
「聞いた俺が馬鹿だった…あーあーびっしょびしょ」
「あ、本当だ。新八っつぁんが一番濡れてんじゃない?」
「平助が濡らしたんデショ…」
「早く帰って着替えなきゃ風邪引くんじゃねーか?」
「お前らは風邪引かないんじゃない?馬鹿だから」
「左之助が一番風邪ひかないんだろーなー」
「俺ぁ風邪なんかひかねぇぜ!」
「はいはい。屯所に帰るヨ」
「おー!」
「家に帰るぞー!」
「家かよ!」
「まぁ、家みたいなもんだけどサ」
「あ、あれ虹?」
「お、雨止んでんじゃねぇか」
「あーきれいだネ」

いつのまにか雨は止んでいて、割れた雨雲から青空が覗いていた。
雲と空の間に小さな虹が出ていてキラキラしている。
傘を畳む左之助。
俺の腕の中から出て行く新八っつぁん。
そして二人は俺の横に並んで、三人で小さな虹を見上げた。

「またさ」
「ん?」
「三人でこーやって馬鹿やって笑ってたいなぁって、思った」
「またも何も、ずっとこうなんじゃないの?」
「違ぇねぇな!」
「ははっ確かに!」

いつもの三人の笑い声が、
いつもの青い空に、消えてった。



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04/06
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