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□タヌキの恩返し
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「えっと、お、お願い?」
「はい。助けていただいたお礼をするのは至極当たり前の事と」
礼儀正しいタヌキだな。
でも俺、タヌキなんて助けた覚えないんだけど。
全く記憶にない。
「2日ほど前、行き倒れていた妾(わらわ)を助けて下さったではありませんか。お忘れですか?」
「ちょっ」
心読まれてる?!
しかも2日前に助けたのはタヌキっぽい猫だし!
「読んだのではなく、顔に書いてありましたよ」
「読んでるじゃねぇかばっちり。喰えねぇタヌキだなぁ」
「それで?お願い事は決まりましたか?」
調子の狂うタヌキを相手にしながら、頭の隅で俺は色々お願い事を考えてた。
でもなかなか選べないでいた。
だって叶えたい事はいっぱいあるし!
「どんなのでもいいの?」
「常識的範囲内でしたら」
「…、あぁそ」
しばし考える。
といっても、いきなりお願い事を叶えますっていわれてもなぁ。
選べない。
「じゃーさ、君を飼うとかそういうのは?あと人間に化けて俺の家に住んで〜とかは、」
おもむろにタヌキを抱き上げる。
幼稚園児くらいしかない小さなタヌキ。
ふわふわな毛が気持ちいいなぁと、ふっと下を、
見てしまった。