book1

□たんぽぽ
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空がやたら蒼かった。


緑の中で金色に光るタンポポと、
木に寄りかかって寝てる新八と、
タンポポでわっかを作る平助と、
それをくゆる煙草の間から眺めている俺を。
サワサワと草を揺らしながら風が流れていく。
たんぽぽのわっかを作り終えたらしい平助は、
寝ている新八の所へ行ってその冠をそっと新八の頭にのせていた。

…何やってんだあいつ。
何でぇ腹抱えて無言で笑ってるじゃねぇか。

「なーに笑ってンだよ」
煙草をくわえながら平助の所へ行く。
目に涙をためながら平助は新八を指さした。
「しっ新八っつぁん可愛すぎッ!クククッ」
「あん?」

あーこりゃ確かに…
どんな小憎らしいガキでも寝顔は可愛いってタイプだな…。
スヤスヤ眠る新八の髪と頭の上のタンポポが風に揺れる。
葉擦れの音と共に、上からヒラヒラ葉っぱが新八の頭の上に落ちてきた。
起こさないようにそれをそっと取ってやる。
小綺麗な顔は相変わらず昔とかわらねぇな。

「平助、後でばれて怒られてもしらねーぞ俺は」
「ん?」

あーあー…満面な笑みで携帯構えちゃって…。
とばっちりを受けそうだった俺は元いた場所に。
煙草を吸ってはき出す。
口の中にいつもの味が広がった。

「…逃げてきて正解だったなありゃ」


結局シャッター音で目が覚めたらしい。
頭のタンポポがばれた平助は散々新八に怒鳴られ、あげくデータまで消された模様だ。
俺はそれを笑いながら眺めてた。
程なくして顔を真っ赤にした新八が俺の所へやってきて平助への愚痴を漏らし始める。


「あいつ本当に馬鹿なんだけど!」
「新八っつぁんーもっかいー!」
「てめーだけでやってろよ!!」
「おーご乱心だな新八ー。可愛いからいいじゃねぇか」
「…見てたんなら止めろよ左之…」





いつもと何らかわらねぇ日常だ
それだからこそ

余計に俺は愛おしく思っちまう
そんなこと言ったらあいつらに

「「らしくねぇ!」」

って、いわれそうだけど
俺はこんな日が
ずっと続けばいいって
ずっと三人でいたいって
よく思うんだ

また昔みてーに、なりたくねーしさ



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