book1

□涙の温度
1ページ/10ページ


よくわからない恐怖があった。
恐怖とは違うのかもしれないけど、
でも逃げたい気持ち。
それが何なのかわからず俺は、
新八っつぁんに触れないでいた。
彼に対しての恐怖ではなくて


触れたら俺が泣いてしまいそうで

怖かった





涙の温度




最近平助の様子が変だ。
いや、あいつはいつも変だ。
そらもう所構わず抱きついてくるわなんだしてくるから。
が、過剰なスキンシップは俺だけに留まらず、数人被害者がいるのは知っていた。
だから俺だけに抱きついているんじゃないんだなと、周りも理解していた。
そのおかげで俺とあいつの関係は、親友以外には知られていない。
おそらく。
…多分。
そうあってほしい。
むしろ願ってる。
そんな学年では有名な抱きつき魔が、ここ最近抱きついてこない。
普通に話しはするし、弁当も一緒、一緒に帰るしゲーセンに寄ったりもする。
その辺はいつもとなんら変わりはしない。
ただ、手を繋ごうと手を伸ばしてこなかった。
抱きついてもこなかった。
ここが、変な所だ。しかも俺だけに。
あいつを目で追っていても、何にも変わらない。
他の人には、あぁ普通に飛びついてるな。
今目の前で、平助が沙夜ちゃんに抱きつき鉄之助に怒られている。
沙夜ちゃんホントちっさいもんなぁ。あの子本当に1年生なのかネ。
まだ中1くらいにしか見えねぇわ。
なんて思いながら、ぼんやり廊下にいる3人を見ていた。
学校の放課後。
呼び出しを喰らった左之助の帰りを待ちながら、俺と平助は俺のクラスで待機。
その途中、担当の教師を捜していた鉄と沙夜ちゃんを見つけた平助は、二人をからかうべくダッシュ。
運悪く平助に捕まった二人と平助を眺めながら、俺は平助が持ち込んだポッキーを咥えていた。

「悪い癖が、出たんかねぇ」
「何の癖?」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ