book1
□涙の温度
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ため息と共に吐いた言葉に平助が問いかけた。
いつの間にか彼らと別れ、俺のそばに来ていたようだ。
「んにゃ、こっちの話」
「ポッキー咥えながらブラブラさせて、食べないの?あ、もしかしてポッキーゲームやr」
平助が言い終わる前にバリバリ食ってやった。
しょぼんとする平助。
「えーそれただの嫌がらせじゃ、って。新八っつぁん、携帯光ってるよ?」
「ん?あー本当だ」
ブーブー文句を言う平助が、机の上に出しっぱなしだった俺の携帯を指さす。
真ん中で携帯が青白く点滅していた。
開くと新着メールの文字。
「左之からだ、あー、バイトの時間ギリギリだから先帰るってさ」
「えー何それ!俺ら今まで待ってた時間無駄じゃん!」
「ま、いいんじゃねぇの?さって。俺らも帰りますか」
ガタッと椅子から立ち上がり、携帯を鞄に放り込んで歩き出した。
平助も机の上のポッキーをしまいながら俺の後ろをついてくる。
普段ならここで後ろから追突してくるんだが。
やっぱり、来ない。
「調子狂うわ…」
ぼそりと口の中で呟いた言葉は、平助には届かなかったらしい。
普通に俺の横に並んでいるだけ。
「…なー平助」
「んー?」
「今日、っつーかこれからお前んち行ってもいい?」
「…、え?」
これは一種の賭。
賭なんて呼べるほどでもないかもしれない。
とりあえず、俺はもう限界だった。