book1
□この温かい。
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大切と。
大好きと。
愛してると。
この3つの同じ所は、
君のそば。
いると感じる
心のくすぐったさ。
ふわっと風が舞っている。
少し冷気を含む風は、歩く俺の前髪を揺らした。
それでも日差しはぽかぽかと暖かくて、散歩日和だ。
トトッと少し小走りで、小さな彼の元へ向かう。
「あ、新八っつぁんー。天気いいし散歩に…」
曲がった所のいつもの場所に彼はいたが、声をかけた俺に気付いた様子はない。ひたと、足を止める。
そっと近づいてみるとやはり彼の目は閉じていて、さやさやと吹く風が新八っつぁんの柔らかい髪を揺らしていた。
柱に寄りかかり、すやすやと眠りについている。
「…ぷふっ可愛い寝顔…」
くすりと笑って彼の隣りに腰を下ろす。
起こそうかとも一瞬思ったけれど、あんなぐっすり眠られちゃそんな野暮な事はできない。
このまま、彼の隣りに居る事にした。
天を見上げると空は綺麗な青一色で、暖かな日差しが降り注いでいる。
時折吹く風が葉擦れの音を呼び、小鳥の声が混じって聞こえていた。
今日は本当に静かな午後だった。
「………。」
すっと目を閉じてみる。
目を閉じても日の光がチカチカと眩しくて、先程と同じ葉擦れと小鳥の声がする。
「…あ」
それに混じって聞こえるのは、小さな彼の寝息。
目蓋の裏にさっきの新八っつぁんの寝顔が見えた。ふっと笑みが零れる。
こんな風に一日を過ごすのも、やっぱりいいな…。
温かい日差しと。
静かな時間。
小鳥のさえずり。
隣りに感じる新八っつぁんの小さな気配。
新八っつぁんが笑ってくれるだけで。
そばにいてくれるだけで。
こんなにも幸せでこんなにも。
心が温かくなる。
幸せだな…。
幸せすぎて少し怖いよ…。
「新八っつぁん…」