book1

□cold
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思ってる事を吐き出すのは別に悪い事ではないと思う。
ただ言っても無意味な場合もある。

今の感情がそのものだ。

珍しく月が出ているだろう外は、きっと寒いだろう。
吐き出す息が白くなるのを想像して身震いした。
季節はゆっくり冬になる。
夜の冷えが厳しくなってきて寒さが身に染みた。

外がいくら寒くても、俺の布団はいつだって熱くて狭い。
一人で寝るために作られた布団に、あいつはぎゅうぎゅうと入ってくる。
いくらあいつが細いと言っても、男二人が寝るには狭すぎた。
ぴったりとくっついてくるあいつの胸が俺の背中を熱くして、
覆い被さってくる腕や、
俺の手を上から包んでくる大きな細い手、
耳元で囁く言葉が、

俺の体中を熱くする。


あいつ一人いないだけの布団は。広く冷たい。
何故か体の芯から冷えてどうしようもなかった。
一向に暖まらない布団。

一昨日は俺が夜の見回りで、
昨日はあいつが夜の見回りで、
今日は確か山南さんの付き添いで、
明日は…

指先が冷たくて、息を吹きかけて擦り合わせてみても冷たいまま。
布団を頭から被って、丸くなってみた。

冷たい、寒い…。


平助が居ない夜は。
寒くて寒くて眠れない…。


そう一言言ってみたいもんだ。

「…寒いんだよ…ばか…」

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