book1

□くちづけ
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耳の奥でドクドクと、自分の鼓動が聞こえた。
すでに取られ握られた手のひらからは熱が伝わって。
握り合った手のひらの熱で、
お互いが繋がっているようだった。
目の前には綺麗な平助の瞳。
光を帯びた硝子玉に俺が映ってる。
見上げ、見下ろされ、
鼻先が触れ合う距離。
閉じた平助の目と、触れた唇は一緒で。
まつげ長いな…なんて思いながら俺も目を閉じた。
軟らかい彼の唇が重なる。
俺の唇に。
じんわりと暖かさが、染み渡る。
彼の唇から
彼の温かさが
体中に、心の隅まで
じわりじわりゆっくりと
優しく侵食していく。
抱きしめられているように。

そんな沁みる暖かさに目の奥が
ジンとした。

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