book1

□約束と、言葉と
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「おかわりいかがですか?」
「あ、はいお願いします」

店員が笑顔で対応する。
俺は顔を上げて同じくらいの営業スマイルを返した。
そして読んでた活字にまた目を向ける。
字を追って、たまに時計を見る。
2時間30分。
店に入ってからそれだけ時間が経っていた。
テーブルに置いてある携帯に目を向けても、待ち合わせをした平助からのメールや着信はナシ。
本を閉じる。
飽きた。
コーヒーを飲む。
コーヒーも飽きた。
視界をガラス一枚隔てた外に向けた。
人間観察。
これも飽きた。
また本を開く、コーヒーを飲む。
ココアが飲みたいなーなんて思いながら…カップを置いた。


4時間。

「有り難うございましたー」

俺は店を出た。
いい加減腹がコーヒーでパンパンだ。
外は冷たい風が舞ってる。首に巻いたマフラーに顔を埋めながらそばの店に入った。
買いもしない服を見たり、本屋に行ったり、雑貨屋に入ってみたり。
ぶらぶらして時間をつぶして1時間。
外はもう暗くなっていた。

大体にして今日会おうと言ったのは平助の方だった。
なのに待ち合わせを決めた時間に来ない。
完璧平助の遅刻だ。
最初はメールや電話をしてみたものの反応がない。
終いには圏外。恐らく電池切れだろうななんて思いながら携帯を閉じる。
待つ必要なんてなかった。
家は知ってる。行けば済む事だ。
ただここで俺が行ったら負けのような気がして。
別に急ぐ用もない。
今日は平助の為に一日空けていたから。
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