book1

□幸
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「え、いいの?」

お昼休みの屋上で。
お互い昼食を食べ終わり、まったりと風を感じていた所…。
新八っつぁんが突然プレゼントをくれた。

「あーお前好きかと思ってさ。やるよ」
「え、新八っつぁんもしかしてわざわざ買ったの?」
「何、不満?」
「すっごい嬉しいよありがとう!」

それは可愛らしい鈴のついた小さな黒猫のストラップで。
新八っつぁんは猫を俺の手の中に入れた。
急いで俺はそれを携帯につける。

「あ、でさでさ…ほら」
「…あ」

新八っつぁんの携帯には同じ小さな白猫のストラップが揺れていた。

「めずらしいね、新八っつぁんストラップ全然つけないのにさ」
「つけない訳じゃないんだけど、なんか邪魔でサ」
「お揃いだね」
「…そーいやそーだな」

ははっと笑う彼。
そういえば昨日は珍しくお菓子をくれた。
自分が食べていた板チョコを半分くれた。
いつもは絶対くれないのに。
一昨日は可愛い猫の写メをくれた。
元々メールは用件でしか使わないような人なのに。

いつもより彼の笑顔が多いのは俺の勘違いかな…。
俺の気のせいかな。ここ何日か幸せだよ。
幸せすぎて…

怖いよ…

山南先生から聞いたんだ。
「嫌な事の後にはそれと同じくらい良い事がある」
って。
ねぇ。その逆もあるよね。
俺今幸せだよ。すっごい幸せだよ。
でも怖いよ。
怖い…。

新八っつぁんがどっかいっちゃいそうで怖いよ。

「新八っつぁん…」
「ん?」
「俺…」
「…どうした平助?」

泣きそうだ…。

ぎゅって、彼を抱きしめた。
新八っつぁんの制服をきつく掴んでいるから、爪が布越しから俺の手のひらに食い込んでいる。
いつもみたいに拒否されると思っていたのに。
思ってたのに…。

「何かあったのか?」

って。優しく背中をぽんぽんって。
目頭が熱くなったけど我慢した。
優しすぎるんだ新八っつぁんは…。
だから…だから…、

「愛してる…」
耳元で小さく囁いた。
聞こえてないかもしれない。
もしかしたら。
口にすら出さずにいたかもしれない。

「ん…俺も…平助…
 ア イ シ テ ル … 」

ねぇ…
新八っつぁん…
俺…
おれ…

「しんぱ…っつぁ……ッ」
「何で泣きそうな声なんだよ。どうしたんだ本当に」
「俺幸せでさ………それでさ、……ね、キスしていい?」
「…………」
「あ、ごめ、」
「いいよ…」
「…、新八っつぁん…」
「うん…」

キスした。
いつもと同じく唇は柔らかくて。
温かくて。
少し甘くて…。



あぁ今少ししょっぱいのは、


俺の涙かな…。

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