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□愛する君を夢見てて
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愛を夢見てて/平助side



バラバラと降る雨が煩くて、
雨が止んでくれるのを願った。
テスト明けのせいか疲れていたんだろう新八っつぁんは、俺の部屋のベッドの上で本を読んでいるうちに眠っていて。
俺は指が挟まったまま閉じてる本をゆっくり抜いて、タオルケットをかけてあげた。
すやすやと寝ている新八っつぁんが可愛くて、飽きもせずにさっきからずっと眺めてる。

たまに頬とかを突くと眉に皺がよって、少しうなってもぞもぞとする。

やっぱりまつげが長いなとか
そばかすも昔と変わらないなとか
唇柔らかそうだなとか

色々思って、眺めて。
触れたくなるのを我慢してた。

バラバラと屋根を叩く雨の音がまた強くなる。
その音で新八っつぁんが少し唸った。
雨が嫌いな彼は、雨が降るといつも少し眉を寄せる。

寝ていても、雨の音は分かるのかな。
それとも夢の中でも雨が降ってる?
触ったら目、覚ますかな…

思いながら俺の指は新八っつぁんの頬を撫でていて。
そのまま滑らせて耳に手のひらを軽く当てた。
指に柔らかい彼の髪が絡んでくる。

あぁ新八っつぁんは温かいな…。

耳を塞いでも髪に指が触れても、新八っつぁんは目を覚まさなかった。
雨が嫌いな理由を知っているから。
どうせなら雨が止むまで目が覚めなきゃいいと思った。
雨が降ってたことなんか知らなきゃいい。
そっと、ベッドに体重をかけた。耳に手は添えたまま。隣りに体を横たえる。
少し狭いから顔が凄く近くて、新八っつぁんの前髪が俺の額をくすぐった。
シャンプーの良い匂いがする。

小さい頃誰かに聞いたおまじない。
まぶたにキスすると悪夢は見ない。

こんなことしたなんて聞いたら新八っつぁんは怒るのかな。
大好きな貴方には、夢の中でも笑っていてほしいから…。
まぶたにキスした。
そして唇にも。
柔らかくて、温かくて。
もう一度。

キスした。



君の夢の中には僕はいるのかな?
あぁ、いればいいな。

新八っつぁんを抱きしめて、雨の音なんか入る隙間もないくらい。
ぎゅって。
抱きしめて。目を閉じた。


おやすみ…。


「おやすみ新八っつぁん…」



「…ん…へ……すけ……」
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