book1

□絡めた指
1ページ/1ページ

「…幸せそうな顔だなぁ」

俺の布団の中で、彼はぐっすり眠っていた。
さっきまでそそられるような官能的な姿をしていたのに、
今では安らいだような顔をして眠っている。
当たり前のよう髪越しから頭に口付けた。
もう一度、今度は前髪を割って額に口付ける。
チュッと音が鳴った。

「新八っつぁん…」
「んー…何…?」

ごそごそと彼は怠そうに目を開いた。

「あ、ごめん起こしちゃった?」
「……。用がないなら俺寝るから」

そう言って新八っつぁんはいつものようごろんと俺に背を向けた。
…せっかくこっち向いて寝てたのに。
いつもいつも、彼は俺に背を向けて寝ている。今じゃ慣れたけど。
後ろから抱きつくからいいもんねーなんて思ってたら、
新八っつぁんの手が、パンパンと布団を叩いている。

「平助、手」
「あぁ…うん」
「おやすみ」
「おやすみしんぱ」

ぐすー…
はやっ。
言い終わる前に、彼は夢の中へ。

「おやすみ…新八っつぁん」

うなじに口付けて、後ろから抱きしめた。
密着する素肌が心地いい。
鼻先をくすぐる彼の髪と、右手に絡む手。
いつからか後ろ向きで寝る時は、彼の右手を俺の右手で繋いで寝るのが当たり前になっていた。
少し小さめの手を、上から覆い隠すように重ねて。
お互いの指を絡め合っていた。
指に感じるキュッと握られてる感じが凄く愛を感じるなんて…
自惚れかなぁ?

いつの間にかこの握られている手が、とても安心するものと感じたのは
いつだったかな。
彼の体温と柔らかい髪と、
この繋がった手が
絡めた指の存在が
すごく心地いいんだ…。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ