book1

□オヤスミ
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「新八っつぁーん」

嗚呼、こいつの頭は一年中春なんだろうな。
と、思った。

「何?」
「散歩行かない?」
「俺これから昼寝なんだけど?」

分かってるだろう事に、そんなこと聞いてきて…。
俺は盛大の笑顔で返してやる。

「あ、今日夜だっけ。じゃ、俺も一緒に昼寝していい?」
「…は?あ、ちょ」

俺に拒否権はどうやらないらしい。
俺が敷いた布団にそそくさと平助は入っていった。

「……」
「寝ないのー?ほら、俺の腕の中に!」

布団と共に腕を広げている平助の前から退散したくなってきた。
さっさと寝ちまえばよかった…。

「嫌だし、狭いし、ていうか早く出てってくんない?」
「うわーひどー。俺こんなに新八っつぁんが大好きなのにさーいいからおいでってばー」

あまりの平助の馬鹿さ加減に呆れる。まぁいつもといえばいつもだけど。
布団から出る所か、部屋を出て行く気すらないらしい。
仕方なく布団へ入る。
あぁもう…この密着感が嫌なのに。
分かってるのか、分かっていないのか。

「新八っつぁーん」
「ん?」
「大好きだよー」
「あぁはいはい。寝るなら寝ろヨ。俺が寝られないだろ」
「適当だなー。俺毎日新八っつぁんに心を打ち明けてんのにさ?」

仰向けで寝ていた平助が俺の方へ体を向ける。
俺は仰向けのまま。

「何度も言わなくてもいいだろ」
「いや違うね!言えば言うほど愛が深まるんだよ!でもこれはまた重さが違うんだよ?」

歯が浮くような言葉を吐きながら、平助は俺を抱きしめ首筋に顔を埋めてくる。

「へいす」
「愛してる…新八っつぁん…」
「ッ!」
「おやすみ」

心臓が跳ね上がった。顔がどんどん熱くなる。
ああ確かに…。
重さは全然違うよ。


ごそごそと体を動かして、平助の胸元に額を押しつけた。
上の方ではかすかに寝息が聞こえる。
全くこいつは俺の気持ちが。
分かってるのか分かっていないのか。

「おやすみ……俺も…」

愛してる、ヨ。

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