book1

□アイヲ
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そよそよと風が吹いて外は良い天気だ。
そんな中新八っつぁんは熱心に本と向き合っていた。

「…平助」
「何?」
「重い、熱い、ウザイ、邪魔」

本を読んでばかりでかまってくれない腹いせに、
俺は今、後ろから読書中の新八っつぁんを抱きしめている。
しびれをきらした新八っつぁんがやっと口をきいてくれた。が、
読書は続行中だった。
そしていつもの刺さるような単語の羅列…。

「だって、せっかく久しぶりに休みが重なったのにさー」

新八っつぁんってば…と、最後の方はごにょごにょ言葉を濁す。
だんだんとだだっ子のような事をしているような気がしてきた。

「へーすけー?」

俺に抱きしめられたまま新八っつぁんは上を向いた。
すると彼を見下ろす新八っつぁんの目と合う。

「何、お前かまって貰いたいわけ?」
「いやっそーゆー訳じゃ」
「そういう訳で俺の読書の邪魔してんだろ?お前は」

ふっと新八っつぁんは前を向いて本を横に置いたあと、俺の腕の中からするりと抜け出た。

「新八っつぁん?」
「平助」

にこりと笑った彼は、立ち上がって俺の前に手を差し出した。

「散歩、行こうか」
「…うん」

彼の手を取って歩き出す。

いつも俺ばっかりが新八っつぁんを愛していたから。
新八っつぁんは俺を愛しているのかなって。

 ただ貴方に愛されたいと、
 思ってただけだったんだよ?

でもそんな心配いらないようだ。
なんだかんだ言って彼は、
俺に笑顔をむけてくれているんだから。

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