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□雫遊戯
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「ちょっと待って新八っつぁんそれはだめー!」
「…何で」

いいんだか悪いんだか、突然遊びに来た平助の第一声だった。
シャーと手の中のホースから水が溢れている。
はずれにはずれた天気予報。
いっこうに降らない雨にしびれを感じて、こうして庭の小さな畑や花たちに水をまいている訳なのだが。

「その格好は、ないと思うんだけど?」
「別に普通だろ?」

タンクトップに、デニムのハーフパンツに、サンダル。
何かおかしいだろうか。
ホースの口に付けたシャワーで乾いた土に水をかけてやる。
濡れるのをさけているのか、平助は一定の距離をおいたままそばにはこなかった。

「いつもよりラフすぎない…?」
「濡れるし汚れるからネ」
「いや、それはわかるけど…。お日様の下でそんな、ねぇ…」
「何だよ」
「水も滴るいい男っていうけど、新八っつぁんの場合は水も妬いちゃうエロい男だよね」
「…じゃぁお前もいい男になりやがれ」
「ぶあっ!」

庭に向けていたホースを、平助の方へ向けて水をかけた。
そらもう頭からジャバジャバと。

「うっわーもう濡れちゃったじゃん!」
「早く逃げないからだろー?」
「びっしょびしょ…」
「…ッ」

そういって濡れた髪をかき上げた平助。
その姿に不意打ちを感じて、思わずもう一回かける。
今度は顔面に。

「ぶわっ!ちょ!新八っつぁ!タッタイムタイム!」
「おわっちょ!待て!冷たっ!」

シャワーを回避するため、逃げずに何故か平助は俺の手を掴んで上に向かせた。
上に上った水がそのまま真下の俺らに降り注ぐ。

「あーあー二人してびしょびしょー」
「新八っつぁんが水かけるからでしょーがー」
「お前が変な事言うからだろ?」

平助の濡れた服が俺の服に触れて、水を吸っていく。
上から注がれる水は二人をどんどん濡らしていった。
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