book1

□雫遊戯
2ページ/5ページ


「あーでも気持ちいいね」
「今日暑いからなー」

目を閉じて上を向いて、顔に当たる水の冷たさを感じていた。
冷たいのに平助が触れている手首や胸元は、平助の体温を感じて少し熱い。
平助の顔や髪から滴る水が俺にかかっていた。
目を開けると、平助は俺をじっと見ている。
笑いながら平助は濡れて重くなったフードをかぶった。
またぼたぼたと水滴が降ってくる。
顔を伝って髪に吸い込まれたり、そのまま首筋を伝っていったり。
手首を掴まれたまま、片手で水で張り付いた俺の前髪を掻き上げられそのまま
キスされた。

「………」
「…ッ!!冷たい冷たい!!待ってそれは駄目!本当冷た!ちょ!!待って!ごめん!!」

キスのお返しに、フードの中めがけてシャワー攻撃をしてやった。
ジャバジャバと平助の服の中に水が入っていく。
逃げる平助。追いかける俺。

「見られてたらどーすんだよ!」
「だから俺フードかぶったじゃん!」
「そんなの答えになってねぇよ!」
「ごめんって!」
「シルエットだけで完璧キスしてるって見えるだろーが!ばか平助!」
「ごめんなさいー!」
「ったく、しゃーねーなー」

シャワーのスイッチを切ってホースを脇に置いた。
平助があちこち逃げるもんだから(それを追いかけてたから)点々と水たまりができていた。
水やりすぎたな…。

「水滴目に入る…」

水が目に入ったらしく目がズキズキ痛んだ。
目を擦り、頭を振って水気を飛ばすも水はまだ滴る。
張り付いた前髪を掻き上げて、手のひらで顔の水滴を拭った。
これでもかという位水を吸ったタンクトップが肌に張り付いて気持ち悪い。
頭上ではギラギラと太陽が、晒した手足を刺激していく。
ポタポタと伝う水はまだ冷たかったが、それもすぐ太陽の熱で温まりそうだった。

「あーもー脱ぐ!」
「えぇ?!」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ