∞NoVEL∞

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14年前――。

――淡い橙色の光が立ち込める研究室。
そこには、中に液体と、人の幼児とが詰まった円筒が幾つも設置されていた。
その傍らでは、白衣を来た研究員達が、各々、円筒に付属する機械に付き、操作をしている。

その円筒たちは全て、人口育成装置だった。

その様子を見渡せる高さにある、1フロア上のギャラリー。
そこには、これら円筒付属の機械を一手に総括する、大掛かりな機械――いわゆる、親機があった。
名を"Rule"という。

その"Rule"の前に立つ一人の男。その男に向かって、同じく白衣を纏った女が声をかけた。

「沖野博士、レイが呼んでいます。」

「――あぁ、九条クンか…」

心ここに在らずといった様子でこう応えた男の名は、沖野章人(オキノアキヒト)26歳。驚くほどの若年でありながら、【第二次ザロ計画】の実行施設である、この研究所を任された、第一博士だった。
声をかけた女は、九条由利亜(クジョウユリア)22歳。第一博士に付く優秀な助手、沖野の右腕となる存在であった。

「おぅ、どうした?章人――いや、沖野博士?」

そんな沖野の様子を見て、陽気に声をかけて歩み寄って来たのは、浜名義一(ハマナヨシカズ)32歳。

「あ、浜名博士、プラグ10〜31のデータ、確認しました。"Rule"に転送しておきます。」

「お!さっすが、仕事早いねー由利亜チャン」

浜名は大手を振って九条に応える。
彼は、沖野が第一博士に昇進する以前に第一博士だった風間宏樹(カザマヒロキ)博士の助手で、親友だった。
当時、浜名にとって沖野は研究員の後輩であったが、今では上下逆の関係になっている。
しかしそうではあっても、沖野は浜名に対して先輩という敬いの気持ちを忘れたことは無かった。

「浜名さん、やはり琴子の予想通り、ヒカル=チセに一番の適合能力があるようでしたか?」

沖野は連なる円筒を見渡しながらいう。

「……ヒカル?」

「ザロNo.11の子供のことです。」

沖野はうすい笑いを浮かべる。

「あぁ、…あいつらを名前で呼ぶのは、お前や琴子チャンくらいだからなぁ。ついつい……わりぃ」

「いえ、普通はそうでしょうから。――でも、やっぱり人を無機質な番号で呼称するのはあまりに……」

「そぉだなぁ――。で、そのヒカル=チセの適合率だが……、あぁ。お前さんの言う通り、琴子第二博士の予想で間違いはないね。他の子供たちの例においての予測も、そうだろうな。」
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