「・・・巧、」


そう言って俺の名前を呼んだ彼女は泣きそうにその綺麗な顔を歪めていた。














「原田、あれって・・・」


沢口に言われてそっちを見てみると、校舎の陰で俺の彼女がうずくまっていた。気が付いたら俺は走っていた。


「・・・おい」

「ッ!・・・ぁ、巧」


俺が話しかけると彼女は一瞬怯えたが、相手が俺だと気付くと安心したようにふんわりと笑った。


「・・・何が、あった?」


「・・・何も、ないよ?」


そう言って笑うが、全然笑えていない。


「・・・、何隠してるんだよ?」


確実に彼女は何か隠していた。


「隠してなんか、ないよ?」


明らかに動揺している。何で隠してるんだよ。


「・・・私、もう行くね!」

「おい!」


彼女はそのまま逃げるように走って行った。


「・・・何があったんだよ・・・」


後に残された俺は呟いていた。










Next.


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