Tales of Destiny2長編

□一話
1ページ/6ページ

さわさわ、と耳に届く木の葉が擦れ合う音。
ふわり、と微かに鼻孔をくすぐる草木の香り。
それらを感じて、ふと、目が覚めた。
真っ先に見えたのは木々の緑、空の青、雲の白。

「ここ……何処…………」

少しかすれた自分の声。
全く見覚えの無い場所だった。
辺りを見回しても、木々しかない。
………いや、木々を抜けた先に何かがある。正確には“いる”だと思うけれど。
どこか気だるい体を無理矢理起こして、木々の間を覗く。
それは、道だった。
そして4、5人の少年達(1人は女の子)が走る。いや、逃げている。後ろから熊をちょっと凶悪にしたみたいな生き物が迫ってきていた。

やがて、挟み撃ちにされて、一人の少年が剣を取り出した。
………あれって、銃刀法違反にならないのかな?でも他の子も何も言わないあたり大丈夫なんだろうけど。

「!危ない!カイルーーっ!!」

女の子が叫ぶと同時に、少年が背を向けていた方の熊が襲いかかった。なんとか防御する。

「っと……あれはなんなのさ……」

口に出す。だけど返事があるわけがない。
助けに行こうにも武器を持って………ない…………。

「………何これ」

腰に下げた一本の剣。というか刀。
え、なに。私も銃刀法
違反?
真っ先にその考えが浮かんで私の思考回路はどうなってるんだ、とため息をつく。
とりあえずもう一度彼らの方に耳を傾ければ、何やら少年の臭いセリフが聞こえて、しかし結局はやられそうになっていた。
と、そのとき。

「でぇやっ!」
「う゛わっ!!」

急に銀髪の青年らしき人が少年の反対にいた熊に斧を降り下ろす。
急に出てきたから、一人で大声をあげてしまった。
………正直心臓がバクバクいっている。
落ち着け、私。やつは人間だ。
なんとか気持ちを落ち着かせてから、別に隠れてるわけじゃないけどなんとなく息を潜めてまた視線を彼らに向ける。




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ