零-紅い蝶-短小説
□約束
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私達は一つにはなれないけど……。
ずっと、ずっと一緒……。
---約束--- By咲人
午前7時。
心地よい朝の日差しと共に澪は目を覚ました。
窓の外を見ると、雲一つない快晴の空に、満開の桜。
自然と自分の顔が綻ぶのが分かった。
きっとほとんどの人が同じ様な気持ちになるだろう。
そう…澪は思った。
ふと隣を見る。
姉の繭が未だに眠っていた。
とても安らかな寝顔で。
あの事件から数日たった。
繭を救うためにかつてない恐怖に耐え、必死に村を駆け抜けたあの事件。
もう二度とあんな思いはしたくない…。
お姉ちゃんが、消えてしまうかもしれないという恐怖心。
それが、澪にはどんなものよりも恐ろしく感じた。
あの事件は思い出したくない。もう忘れてしまいたい。
そう……何度も思うのに。
澪には忘れることが出来なかった。
きっと繭との約束があるから。