零-紅い蝶-短小説
□薬指
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お姉ちゃんから教わった事は数えきれないほどある……。
その中でも私がとても心をひかれた話。
多分それは私が物心ついてすぐの話だと記憶している。
---薬指----By咲人
10数年前夏
「澪知ってる?私達って、お母さんのお腹の中にいるときからずっと小指に赤い糸がついているんだよ。」
得意気に話す繭。
零と繭は家の縁側に座っていた。
今日は珍しく夏の日差しが弱く、久しぶりに過ごしやすい日だ。
『お姉ちゃんの嘘つき。そんなのどこにもついてないよ。』
澪は自分の小指を見ながら、顔をしかめている。
「嘘じゃないよ。お母さん言ってたもん。それにその糸は目に見えないんだって。」
なんとか澪を説得させようとする繭。
『ふーん。そうなんだ。でもそんな糸なんでついてるの?』
「それはね、私達達が大好きになる人の小指に繋がってるんだって。」
満面の笑みを浮かべ話す繭に……。
「じゃあ私はお姉ちゃんと繋がってるね。」
そう言って自分の小指を嬉しそうに見つめる澪。