零-紅い蝶-短小説

□包帯
1ページ/8ページ




「あそこに誰かいるよ……。」



震えながら、絞り出すような声で話すお姉ちゃん。



私とお姉ちゃんは皆神村と呼ばれる村に迷い込み、そして古い家に隠れたのだった。



お姉ちゃんはあまり走ることが出来ない。



私は拾った射影機を構えてお姉ちゃんの指の方向を見る。



お姉ちゃんは私にしがみつき目を閉じ、震えている。



『大丈夫…だから。』



そう言ってお姉ちゃんを落ち着かせる。


けれど、私だって本当は怖い。



お姉ちゃんの指をさす方向には何も無いの空間。



お姉ちゃんの感じている'もの'



きっと説明しても誰も分かってなどくれない。



小さい頃からお姉ちゃんと一緒に暮らしてきて、私も微妙に感じる事ができる。


それが何なのか。



口には出したくない。



やっぱり怖い。



けれど絶対に逃げ出す訳にはいかないのだ。



何があっても絶対に。



お姉ちゃんの右足を見る。



白い包帯……。



お姉ちゃんの右足には包帯が巻かれている。



きっとこの包帯は一生とれないだろう。


私のせいだ……。



射影機を構える。



だから、私が守らなきゃ。



私の命に代えても…。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ