零-紅い蝶-短小説
□包帯
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「あそこに誰かいるよ……。」
震えながら、絞り出すような声で話すお姉ちゃん。
私とお姉ちゃんは皆神村と呼ばれる村に迷い込み、そして古い家に隠れたのだった。
お姉ちゃんはあまり走ることが出来ない。
私は拾った射影機を構えてお姉ちゃんの指の方向を見る。
お姉ちゃんは私にしがみつき目を閉じ、震えている。
『大丈夫…だから。』
そう言ってお姉ちゃんを落ち着かせる。
けれど、私だって本当は怖い。
お姉ちゃんの指をさす方向には何も無いの空間。
お姉ちゃんの感じている'もの'
きっと説明しても誰も分かってなどくれない。
小さい頃からお姉ちゃんと一緒に暮らしてきて、私も微妙に感じる事ができる。
それが何なのか。
口には出したくない。
やっぱり怖い。
けれど絶対に逃げ出す訳にはいかないのだ。
何があっても絶対に。
お姉ちゃんの右足を見る。
白い包帯……。
お姉ちゃんの右足には包帯が巻かれている。
きっとこの包帯は一生とれないだろう。
私のせいだ……。
射影機を構える。
だから、私が守らなきゃ。
私の命に代えても…。