零-紅い蝶-短小説
□包帯
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「澪〜。お願い。」
繭が澪を呼ぶ。
『はいよ。っしょっと。』
澪がしゃがんで、白い包帯を持ち、繭の右足優しく持つ。
入浴後の日課。
繭の右足の包帯を巻き直すのは澪の仕事になっていた。
繭は小さい頃、山中で澪と遊んでいて、右足に大怪我を負った。
そして今でも包帯を巻いているのだ。
『はい。お姉ちゃん終わったよ。』
包帯を巻き終えた澪。右足の包帯は綺麗に巻かれている。
「ぇ?あ、ありがとう。」
『どうかしたの?お姉ちゃん。』
「ううん。澪包帯巻くの上手だなぁって。」
そう言って微笑む繭。
『だってお姉ちゃんにこうしてあげるのは私の日課だから……。』
そう言って澪は繭の右足の包帯部分に手を添える。
そっと触れる程度に。
『それに……。』
「それに?」
何かを言いかけた澪に繭が問い掛ける。
『ううん。何でもない。』
そう言って繭の手に自分の手を絡める澪。
「そっか……。」
繭も手を握る。
『そろそろ寝ようか?』
「うん。そうだね。」
そう言って二人は寝室に向かった。