K(連載)
□それは始まるために終わる物語
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「悲しみを」十束編
体に走る痛み。
下がっていく体温。
流れ出ていく赤。
滲む視界に移るのは大切な仲間である二人。
「(…あぁ、八田そんなに泣かないでよ。草薙さんもそんなに苦しそうな顔しないで。でも、悲しんでくれてありがとう、あんまり引きずらないでね。キングのこと、よろしくね)」
言いたいことは山ほどあるのに、俺の口はもうほとんど動かない。
「へーき、へーき…なんとか、なる………ごめん」
その言葉を最後に俺の意識は暗転した。
次に俺が目を覚ましたのはザァーという雨音がしたからだった。
重たい目蓋をそっと開けば雨は実際に降っており俺の体を濡らしていた。
雨に濡れたことにより重さを増す服。それと比例して俺の心も次第に重たくなっていく。
俺は間違いなく死んだ。つまり俺はもう仲間に会うことはできないのだろう。
置いてきてしまった。キングを支えるのは俺と草薙さんの役割だったのに。
草薙さんには苦労かけちゃうなぁ、キング言うこと聞くといいけど。
いや、でも、無理だろうなぁ。
考えれば考えるほど沈んでいく心。
いくら考えて思いを馳せたところで彼らにはもう会うことはない。
そう思えば心が痛くて、目頭が次第に熱くなっていく。
まるでこの雨のように俺の心の中も雨が降っているようだ、なんて考えていたら。
俺の頭上の雨が、止んだ。
「絶対、大丈夫ですよ」
何も言っていないのに、彼女は俺の何かが分かっていたのだろう。
初対面の彼女は俺の濡れている髪を気にすることなくそっと暖かい手で頭を撫でてくれた。