名探偵コナン(連載)

□~長い長いプロローグ~
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おそらく俺は元の世界で死に、何らかの原因でこちらの世界にトリップしてきてしまっただのだろう。
きっと、いや確実に元の世界に戻ることはできないだろう。
なぜだかそれだけは確信できた。
ならば俺はこれからどうすればいいのか。どうこの世界で生きていけばいいのか。
ここには俺に関するものは何もないんだ。

呆然と立ち尽くす俺を車のライトが照らした。
咄嗟にライトから顔を逸らす。
すると、バサリと傘を開く音がした。
逸らした視線の先に移るヒールの靴。
そして、俺に降り続いていた雨が止んだ。


「あらぁ、ずぶ濡れじゃない。うちに何か用事?」


聞こえた優しい声にふと顔を上げればそこにいたのは微笑みを浮かべて俺に傘を傾ける工藤有希子さんの姿。
ふと脳裏を過ったのは両親の姿。
もうしばらく、向けられていなかった両親の優しい微笑みの姿が、有希子さんに重なって見えた。
その瞬間、ポロリと溢れ出す涙。
歪む視界の中で有希子さんが目を瞠ったのがわかった。


「あらあら、どうしたのぉ?さぁ、うちにいらっしゃい」


そっと背を押され、工藤邸に入れられる。
すると、ちょうど階段を下りてきていた工藤優作さんと遭遇した。
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