文豪ストレイドッグス

□届かぬ声
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「龍、先に合流地点に行ってくれる?」
「…しかし、」


太宰と桜の間を交互に見やり、躊躇った様子の芥川に桜はそっと苦笑した。


「それとお遣いを頼みたいんだけど。午前の紅茶ストレート。私が好きなの知っているよね?今日まだ一口も飲んでないの。龍探してて買ってないし…頼める?」
「…分かりました」


渋々納得した芥川が最後にちらりと太宰に視線を向け、その場から立ち去る。
その芥川の背を見送っていた桜の背に、声がかけられる。


「…随分、君に懐いているね。前から懐いてはいたけれど、前よりもさらに」


太宰の言葉に名前は一つため息を吐いた。


「…あなたが居なくなってから私を拠り所としているんでしょう」
「…っ」


それは遠回しに芥川を置いていった太宰を責めているようにも聞こえた。


「まぁ、それは置いておいて私に何か用ですか?」


そこで初めて桜は彼の方へ体を向けた。


「桜、君はマフィアを抜けるべきだ」
「…今更何を言っているんですか」
「織田作は君がそこに居続けることをよく思っていないはずだよ」


彼の口から発せられた“織田作”という単語に桜の頭に血が上るのが分かった。


「そんなの分かっています!それでも、いえ、だからこそ私はポートマフィアを抜ける訳にはいかない」
「……どうして」
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