文豪ストレイドッグス
□君へ捧げる愛想曲
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地下牢へ続く廊下を歩いていると、
「…頃合いかな」
聞こえてくるのは懐かしい声。
「あいっ変わらずの悪巧みかぁ?」
「その声はっ」
表情を歪ませたそいつに思わず笑みがこぼれる。
「いいねこりゃあ。最高の眺めだ。百億の名画にも勝るぜ。えぇ?太宰」
やはり、捕らえられた裏切り者というのはこいつだったのだ。
「最悪、うわっ最悪」
「いい反応してくれるじゃないか。縊り殺したくなる」
そう、こいつは俺たちポートマフィアを裏切っただけではなく、その敵対組織の武装探偵社に身を置いているらしい。
俺にはこいつへの憎しみがある。
まぁ、もともと犬猿の仲だったわけだが。
「わあ、黒くてちっちゃい人がなんか喋ってるー」
「あぁ!?」
「前から疑問だったのだけれど、その恥ずかしい帽子はどこで買うの?」
「言ってろよ放浪者。いい歳こいてまだ自殺がどうとか言ってんだろ、どうせ」
「うん」
「…少しは否定する気配くらい見せろよ」
こいつは前からこうやって俺に嫌味などを言ってからかってくる。
反対に俺が嫌味を言えばさらりと流されたりその倍の嫌味が返ってくる。
ほんっとに憎たらしいやつだ。
というか未だに死ねないその生命力は一体どうなっているのか。