文豪ストレイドッグス

□君へ捧げる愛想曲
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「だが、今やお前は悲しき虜囚。泣けるな、太宰。否、それを通り越して少し怪しいぜ」


鎖に拘束されている太宰の髪を鷲掴み顔を近づける。
その瞳を見つめることで精神の揺れを確認するためだ。
しかし流石というかこいつの瞳には何も見えない。
焦りや動揺、そして絶望の類も見受けられない。


「丁稚の芥川は騙せても俺は騙せねぇ。何しろ俺は手前の元相棒、だからな。何するつもりだ?」
「っ、何って?見たままだよ。捕まって処刑待ち」


だが、一瞬だけ俺がさらに顔を近づけた瞬間だけ、わずかに太宰の瞳に戸惑いの色が見受けられた。
だがそれもすぐに元の色に戻ってしまう。
こういう心理戦で俺がこいつに勝てた例もねぇ。
掴んでいた髪を離し、背を向ける。


「あの太宰が不運と過怠で捕まるはずがねぇ。そんな愚図なら俺がとっくに殺してる」
「考えすぎだよ。そもそも君、何しに来たの?」
「嫌がらせだよ。あの頃の手前にはさんっざん弄ばれたんだ。…だが、」


言葉を途中で止め、体を回転させることで遠心力を加えた回し蹴りで太宰の頭上の鎖を断ち切る。


「そういうのはたいてい後で十倍で返される」
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