その他
□腹痛 ヴィンス
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セフィロスとの戦いを終え、それぞれが自分の生活に戻っていた。
神羅屋敷にて10周年ありがとう!とヴィンセントはじっとお互いを見つめていた。
「…ダメ?」
「…ダメだ」
「…なんでダメなの?ヴィンセントも久々にみんなに会いたくない?」
「…つい先日も会いに行っただろう」
時々しか顔を合わせない中、ごくごく稀に恋しさに仲間に会いに出かけていく。
そんな日々が続いていた。
ヴィンセントが言った通り、10周年ありがとう!は先日もティファに会いたい!とせがみヴィンセントを伴いミッドガルへと出かけていた。
にも関わらずまた行きたいというのだからヴィンセントが怪訝な表情を浮かべるのも自然だろう。
「でも…」
「ダメだ」
「っもういい!じゃあ1人で行ってくる!」
そう鼻息荒く立ち上がった10周年ありがとう!だったが、立ち上がった瞬間その前がブラックアウトした。
ぐらりと体の力が抜けた。
自らの膝がかくりと折れ体が倒れていく。
そんな体を包み込むように支えられる。
「…だからダメだと言っただろう」
嗅ぎなれた香り、そして感じなれた温もり。
耳元で聞きなれた声が呆れを含みつつ優しくささやく。
「…な、で?」
「先ほどからあまり顔色が優れなかった」
本人でさえ気づかなったことに、彼はこの薄暗い室内で気づいていたらしい。
背と膝の裏に手を差し込まてふわりと軽く持ち上げられたのが分かった。
そっと瞼を開けばそこにはいつもの彼の姿。
いつもと同じ深紅の瞳には呆れと不安、そして心配の色が窺い知れた。
ヴィンセントは10周年ありがとう!を抱えたまま再びソファーへと腰を下ろす。
「…どうだ?」
「…ん、大丈夫。まだ少しクラクラするけど」
細身に見えてわりとしっかりした体つきの彼に体を預けてそっと息をつく。
貧血のような感覚ではない。
ただ少し視界が回ったように感じた。
「…最近落ち着く時間がなかったからな」
10周年ありがとう!があそこへ行きたい、何をしたい、というのでそれにヴィンセントも付き合っていたがそんな彼でさえ忙しなかったと感じるのだ。
「…今日はおとなしくしてろってことかな」
「ミッドガルにはまた改めて行けばいい」
「…うん」
そのままヴィンセントのマントに包まれるように抱きしめられ、10周年ありがとう!はそっと眠りに落ちた。