その他

□腹痛 ヴィンス
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ラボでいつもの様に研究に明け暮れる日々。
パラドクスを少しでもどうにかできる方法探さなければ。
過去の文献などとにらみ合っていれば次第にチカチカとする視界。
それにともない鈍い痛みが頭に走る。
最近は頻繁になってきたこの痛み。
そういえば研究してばかりで休憩をしていない気がする。
一度上体を起こし、瞳を閉じてこめかみを押さえる。
パソコンや書類に集中しすぎてしまったらしい。
もう少し目を労わるべきだろうか。
そんなことを考えていると、


「…10周年ありがとう!、大丈夫?」


そっと頬に触れる暖かい手のひら。
閉ざしていた瞼を持ち上げればそこには見慣れた人の姿。


「…ホープ」
「どうしたの?体調悪い?」


不安げな顔で見つめてくる彼は10周年ありがとう!の恋人である。


「ううん、ちょっと頭が痛いだけ」
「…それを体調悪いって言うんじゃないかな」
「え、あ、そっか」


苦笑を浮かべた彼は私の頬に当てていた手でそっと頭を撫でる。


「…まだ仕事は残ってるの?」
「うーん、ちょっと行き詰ってるって感じかな」
「…ならさ、今日はもう帰らない?僕もちょうどひと段落したからさ」
「え、でも…」
「帰ろう?10周年ありがとう!。僕たちの家に」
「…ずるい」


そんなに優しい瞳で、声で言われたら帰らないわけにはいかないんじゃないか。


「今日はもうゆっくり家で休もうか。僕もさすがに疲れてきたし」


そっと頭にあった手が離れ、10周年ありがとう!の手を掬い取る。


「今日はくっついて寝よう」
「…いつもでしょ」


10周年ありがとう!よりも遅く帰ってくる彼は私と同じベッドに入ってきたかと思えば10周年ありがとう!を抱きしめて寝ているのだ。
朝、10周年ありがとう!が気が付けばくっついているのだから。


「はは、嫌だった?」
「…嬉しいです」
「…ふっ、良かった」


私はいつもこの人には勝てないんだ。
その優しい瞳が私を写すだけで胸がポカポカして…幸せな気持ちになる。


「…いつも、大好きですよー」
「え…」


ちょっとした仕返し。
でも、本音だから。


「僕も、いつも、いつまでも大好きで愛してる」


……ほらね。


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