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13 鮮烈なるは我が純情

縦に地を割るように振るい、横に弧を描くように薙ぐ。
姿勢を低くしてぶん回したかと思えば、ふわっと背後まで飛んで蹴り。
普段使ってる節棍じゃなく、戟を握るあいつを、俺はぼーっと見ているだけだった。
その内目を瞑って、その姿を反芻する。
あー、俺けっこうヤバいな。

そんな下らねぇ事考えてたら、頭軽い衝撃。


「いて」
「なーに黄昏れてんだよ。ヒマなら手合わせしようぜ」
「あー。凌統」


頬上気させて、汗じんわり浮かべて、笑顔。
お前さ、試してるよな。
そう思ったから立ち上がった勢いで髪束引っ張ってやった。


「いった!何すんだっつの!」
「おら、やるぜ」
「はん、今日こそぶちのめしてやるっつの」


戟放り投げて懐から節棍だして。
なんつーかもう、そんな満足そうな顔向けられたら俺まで満足しちまうんだよな。
なんだこのベタ惚れ具合。前からだけどよ。






「かーんねい」
「おう凌統」
「腹減った」


手合わせ(結局引き分け)終わって、お互い水浴びまくったあと。
凌統がひょこひょことやって来てそんなことをのたまった。
つまりアレか、奢れってか。別にいいけどよ。

飯屋について適当に頼んで、目の前のタレ目を見る。
なんで俺こんなんに惚れたんだろ。カワイイとか思う時点で目ぇ腐ってるぜ。
すると凌統はたどたどしく話し出した。

「あのさ・・・」
「ん?」
「この前の、ホンキ?」

この前、っつーのは数日前、俺がこいつに告ったことだろう。
まあそりゃ戸惑うわな。こいつはきっとめちゃめちゃ考えたんだろう。
当たり前だろ、俺は自信満々に答える。悪いがこっちは、言った後余計にてめぇが気にかかるんだよ。
すると凌統は目を彷徨わせて、結局真下の茶に落ち着かせてぼそぼそ紡いだ。

「・・・まだ父上のこと忘れたわけじゃないし、あんたを急にそんな目で、なんて無理だよ」
「ンなこと分かってるって。ただ言いたかっただけなんだよな。俺はお前が好きだってさ」
「あ、あんたよく・・・」

顔真っ赤に染めて、可愛い。本当に可愛い。
別にいくら待っても構わねぇし、俺はお前のしたいことをすればいいと思うぜ。
このままがいいならそうするし嫌悪を抱いたなら離れるしな。


ほんと、俺って純情だろ。
お前にベタ惚れなんだよ悪いかよ。
お前に微笑まれただけで、限界なんだよな、本当は。


【鮮烈なるは我が純情】
なんたってだいすきだからね
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