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14 耿耿【こうこう】

馬鹿の甘寧が、こっち見てるのが分かる。
正直ちょっと、いやかなり恥ずかしいっつうか。
なんたってこの前さ、俺あいつに告られたんだよね。

「なあ、俺お前のこと好きだから」

見たこともないような真面目な顔で言われて、反応できなかった。
それをどう取ったのか知らないけど甘寧は帰っていって。
俺はと言うと動けなくて・・・え、今の何?状態。


んで、今の状況。
まぁ部下と手合わせしてるからさ、そこまで気散らすわけにも行かないんだけどね。
戟を十分振り回して息を整えたあと甘寧をちらりと見ると腕組んで目瞑ってた。
眉にちょっと皺寄ってる、寝てるんじゃなくて考え事ですかい。
俺は何かを決して甘寧に近づいて、その頭を小突いてやった。

いて、とこぼしてから俺を見上げる甘寧。
ちょっとドキっとした。なんか、男くさい表情だった。
なにかに耐えて手合わせを申し込む。
ポニテ引っ張られてムカついたけど、その顔がやっぱり男くさくて焦った。
手合わせん時は、集中してるから気にならなかったんだけどさ。



ばしゃん

水音が聞こえる。
甘寧が水浴びしているのが見えて、無意識に近づいた。

振り返った甘寧に腹減ったと言うと飯屋に連れて来られた。
注文を甘寧が、じっと俺を見ているのが分かってまた焦る。
なんだよもう、なんだこれ。

「あのさ・・・」
「ん?」
「この前の、ホンキ?」

頑張って尋ねてみた。
この前っつうのはもちろんこの間の告白のことで。
甘寧はしばし考えて、それからあぁ、とでも言うように呟く。

「当たり前だろ」

自信満々に言われて困った。あぁ、本気なんだ、って思った。
自分の考えは、しっかり持ってるつもりだ。
俺は父上の事が大事だし、それを忘れてはならない。
だけどこの男がもう様々な意味でかけがえのない人物なんだってことくらいは、分かってる。
それをまっすぐに伝えてみたら、まっすぐ返ってきた。

「ンなこと分かってるって。ただ言いたかっただけなんだよな。俺はお前が好きだってさ」
「あ、あんたよく・・・」

そんな恥ずかしいこと言えるな!
ちくしょう・・・こんなにまっすぐ言われて赤くならないわけがないのに。
最近ずっとあんたのこと考えてんだよ。
いや昔だって、仇っていう意味ではずっと考えていたけど。
好きかなんか分かんねぇよ。ただ嫌ではなかった。曖昧だけど。

ああ、もう、本当に・・・

あんたのせいでここんとこ、全然休まんないんだけど。


【耿耿】
きらきらぐらぐらゆらゆら
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