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22 意味が不明瞭です(メイクアップアーティスト!というネタより)


俺はこの日、専属メイクの甘寧に呼び出しされていた。
それも甘寧の自宅に。
普段のメイク中も何かとセクハラをされている身としては、行きたくなかった。
けどどうやら真面目に色々試したいらしく、何度も懇願してくるから仕方なくOKしちまったわけだ。
俺も、甘いよね本当・・・

教えられたマンションの部屋番のインターホンを押すと、扉が開く。
そのまま階段を上がり、今度こそ部屋のそれを鳴らした。
すぐに扉が開けられ、甘寧が出てくる。

いつもはダンダナでとめている髪を下ろしていて、なんだか雰囲気が違う。
そう思って、思わず見惚れているとなぜか抱きしめられた。

「おっ前、なんて熱視線送ってくんだよ、ムラムラすんだろ」
「はぁ!?意味分かんねえし、つうか放せよ!ド、ドア開いてるし!!」
「だったらもっと静かにしような」
「誰のっ、んんっ!?」

強引に口付けられて、舌まで入れられる。
俺の意思などお構いナシに動くそれが、腹立たしかった。
甘寧はどうやら足でドアを閉めたらしく、そのまま閉じたドアに押し付けられてまた口付けられる。
最悪、さいあく。

なんで俺、感じてんの?

「ふはっ・・・はっ、はっ、・・・てめ、セクハラしたいから呼んだのかよ・・・!」
「まーそう怒んなって。それも一理あるが、本当に真面目な理由で呼んだんだぜ?・・・涙目で睨むな、犯したくなる」
「このバ甘寧・・・!」

殴りかけたその手を取られて、そのままずるずると家に引きずり込まれた。
意外と広いそのリビングの中央に、等身大の鏡とイス、それから道具が置いてあった。

「ここ座れよ。ちっとお勉強の時間くれや」
「お勉強?」
「お前をよく知るための。やっぱこういうのって練習量だろ」

そういうや否や甘寧はさっと俺の髪を解き、その後で一気にまとめる。
顔にかかる髪がなくなってすーすーした。
俺はイスに座りながら鏡を見る。甘寧はイスの背ぎりぎりまで来ていて、俺の顔を掴む。
輪郭をなぞり、目の位置を確認する。

やらしいとか、思ったら負けなんだよな、きっと。

「お前、ショートも似合いそうだよな。まぁここまで伸びたのを切りゃしねえが」
「髪はそんなにこだわってないし・・・あんたの好きにすれば」
「おう、ちょっと切るぜ。まぁその前に顔いじるけどな」
「女みたいにゴテゴテにすんなよ」
「しねーよ」

甘寧のメイクの手つきは、ムカつくけどピカイチだと思う。
早さも丁寧さも、今までの人を上回っている。ほんとムカつくけど。
男だし、そんなにすることもなくメイクは終わり、髪に移る。
あんた、美容師の資格も持ってんの?と言いたくなるほどの手つきだ。

「まぁ、こんなもんか。色白いからよ、やっぱそれは活かしてぇよな」
「あんた、本当に上手いよね・・・これはマジで」
「ありがとよ。あとは・・・そうそう、これも」

べろりと泣き黒子を舐められる。
ぞわっとしたものが背筋を駆け上がった。
結局セクハラかよ!?と一発殴ってやろうと振り向くと、妙に甘寧が真面目な顔をしていたから思わず止まっちまった。
なに?え?なに!?

「・・・なん、だよ」
「いや、俺、マジでお前に惚れてるなぁって」

頭を撫でられた。
嬉しくもなんともない、男に、しかもゴツゴツした手でそんなことされたって。
けれど甘寧はそのあと、一度俺を抱きしめた後に追い出すように俺を家に帰らせた。
全然、意味がわかんない。
あの抱擁も、あの表情も。


「意味、わかんないんだけど・・・」


この壊れたような俺の心臓も。


【意味が不明瞭です】
知りたいけれど、怖さもあるの
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