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23 キズモノ

ぼーっと空ばっかり見てやがるから、結った髪をわしづかみにしてやった。
痛そうに悶える姿に満足して、再び書簡に目を戻す。
正直かったるい。ここまで溜めたのは俺だけどな。

「ってめえ〜何すんだっつの!せっかく人が良い気持ちでまどろんでたってのにさ!」
「人のこと差し置いて寝ようってか?そりゃないんじゃねえの凌統よぉ」
「てめぇの仕事なんざ知るかよ!くそ、マジ痛ぇ・・・!」

涙目で訴えられると正直むらっと来る。
ったく、邪魔してんのはどこのどいつだよ。
そもそもこいつ、呼んでもねえのにここで何してんだ?

「なんでお前ここにいんだよ」
「・・・いちゃ悪いのかよ」
「んなことねえけど、俺今てめーなんざ構えねえぜ」

不機嫌そうな顔の凌統。
抱きしめて口付けて思う存分あいつを構ってやりたい、本当は。
まぁさすがにこれ以上執務のばすとまじぃから、出来ねえんだけど。

「・・・責任取れよ」
「は?」
「さっき、俺の髪引っ張ったろ?俺をキズモノにした責任、取れ」

なんだァそれ、思わず俺も手ぇ止めて目ん玉ひん剥いちまったじゃねえか。
お前ってたまに、すげーこと言うよな。

「キズモノって」
「言っとくけど、本当に痛かったんだからな・・・!」
「そりゃ悪かった。けどよ、お前言ってることめちゃくちゃ・・・」
「・・・俺とそれ、どっち取るんだよ」

珍しい。
あまりに珍しくてこの俺が硬直しちまうくらい。
それって、これだよな、この恐ろしい量の執務。
凌統はじいと俺を見る。

馬鹿、お前、なに比べてんだよ・・・・

「大事な執務だぜ、放っておけるか」
「・・・今まで散々放置しといてかい」
「はは、そりゃそうだ。・・・おら、来いよ」

胡坐の間にぽんぽんと手を置いてやればのそのそとやってくる。
本当にどうしちまったんだ、こんな素直な奴だっただろうか。
あぁもう、執務は放置決定だ、タレ目のせいで。

「キズモノにした責任とってやるよ」
「・・・じゃあ俺は明日キズモノにされるあんたへの責任、とってあげる」

火矢を構えた陸遜が頭に浮かんでぞっとした。
とりあえず今は、それを打ち消すほどの口付けをしよう。

とんでもなく骨抜きにされてる、てめぇに。


【キズモノ】
背中のキズは赦せるけれど
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