お題保管庫

□ 
1ページ/46ページ


33 たくらみ笑顔


凌統が何かをたくらんでいる時。奴はものすげえイイ顔で笑う。そこいらの女ならイチコロだろう爽やかスマイルはむしろこんな時にしか見れねえ。
ったく、どんだけ捻くれてんだこいつ。

「よっ、かーんねい」
「おうおう、イー笑顔だなおい。何企んでやがる?」
「たくらむだなんて人聞きのお悪い。じゃーん、新入荷、ニューアライバル」

そういって凌統が見せてきたのはぴらりと風にゆれる麗しい洋服…なんてことあるわけなく、むしろそれは細身で一見美男の凌統が持つには不釣り合いな代物だった。
じゃら、と鈍く重厚な音を響かせるでっけえ鎖。それに繋がるのは人の頭よりでかい鉄球。さらにはそれのあちこちに尖った鉄が張り出している。
魏のはげがこれに似たようなのを持っていた気がする。とかこれが頭に降ってきたらさすがに死ぬよな、とかそんなのんきな感想しか出て来なかった。

「ど?殺せそう?」
「…一応聞くが、誰を殺すんだ?蜀を潰す?あぁ、魏を滅ぼすのもいいよな」

俺も精一杯の笑顔で聞いてやった。答えなんざ分かりきってやがるのだが、万が一の可能性もある。そんな俺の笑顔を一蹴するように凌統は鼻で笑うと再びにこりと笑った。
かーわーいーいーなーちくしょう!

「あんたに決まっ、て、ん、で、しょうがっ」
「うおおおっ!!」

言いながら凌統は長い鎖のせいで持ち上げるのも辛そうなそれを軽々と扱い、俺の方に向かわせてきた。ちょっと、本気で死ぬかもとか思っちまった。だせえ。

「お、おまっ、いくら外だからってここ領地!領地だぜ!」
「殿にも笑顔で見せたらさ、嬉し涙を浮かべてGOサインくれたんだぜ」

殿―!!俺を捨てたんすか殿ぉ!?
凌統は無邪気な笑顔で(しかしやはりどこか黒く見える)俺にがんがん攻撃を仕掛けてきた。あれを操る筋力はどこについてんだよ。と内心ののしるも今直接には言えそうにない。
がつんがつんとヤバイ音を立てて俺を追い詰めるトゲトゲ鉄球、と笑顔の凌統。

ぷつん、と何かが切れた音がした。

扱いなれてない、そして難しい得物は振り上げた時と振りおろした後にほんの少し隙が出来る。俺はそれに合わせて一気に凌統に詰め寄り、

「うわっ!?」

押し倒した。もちろん得物は手からはずさせて。

「…手、赤くなってんじゃねえか」
「今日初めて使ったんだっつの、仕方ねえだろ」
「バーカ、慣れた得物でかかってこいっつってんだよ」

押し倒したまま凌統に口付けた。やわらけーとかつめてーとかそういやここ領地だっけとか考えたがすぐにどうでもよくなった。凌統は大人しく受け入れている。いつもこうなら可愛いのによ。

「…構ってほしかったのか?」
「っバーカ。うっせえっつの」
「否定しねえのか。可愛いなぁお前」
「マジでぶっ殺すぞ」

凌統が本気で殺そうとしていないことなど一目瞭然だ。それは俺に限らず全員、殿だって分かってる。だからこの無邪気な仇討ちを許してしまうのだろう。
それはやばいだろ、と思うこともあるが大体は俺も許してしまう。なんだろうな、全員甘すぎんだろうな。

「うん、やっぱ俺はいつものが好きだ」
「俺が?」
「違ぇっつの!せつこん!やっぱ俺には棍だよなって!」
「へええ、ふううん。そんなに俺が好きかぁ、仕方ねえな」
「そ、その顔っ…何企んでんだよ!?」
「カワイーお前を隅々までご馳走になろうかと思ってよ」
「うわあああっ、降ろせっ…!てかその顔やめろ!」

ニヤッと笑う。それが俺のたくらみ笑顔。
カワイイだろ?

【たくらみ笑顔】
わらってしかけて。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ