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39 甘いものには目がないの


よく意外だと言われ、時には引かれるが、俺は甘いもんに目がねえ。つうか、誰が何を好もうと自由だろうが。なんでんなことで引かれなきゃなんねえんだ?

「そりゃあんた、その雄々しい見た目で甘党っつうのが想像つかないからでしょうよ」
「ギャップ萌えだろ、そこは。可愛いじゃねえか」
「ははっ、ねーよ」

爽やかに返された。おい、俺だって傷つくぞ。
いつも通り凌統と戦場と同じくれえ緊迫した仕合をした後、俺は消費した体力を取り戻すように甘味を摂取していた。凌統はというとのんびり花の浮いた茶を飲んでおり、時折こっちを見ては嫌な顔をして目をそらすという失礼なことを何度も繰り返していた。

「欲しいならやるぜ」
「だから、俺は甘いのは勘弁なんだって。小さいころよく戻してたんだよな…」
「んだよ、今もそうだとは限らねえだろうが」
「一種のトラウマって奴ですよ。これでも目の前で食ってんのを許すくらいには成長したんだぜ」
「へえ、こんなうめぇのに勿体ねえ」
「放っとけっつーの」

ふいと首ごと目をそらした凌統に、何故かふと目を奪われた。ようやく汗の引いてきた白いうなじ、少し乱れた結わった髪、まだ少し赤みがかる頬。気が付いたら俺は凌統の顎をすくって、思うがままに口付けていた。いつでもこいつの唇はやわらかくて、そして何故かひんやりしている。なんでだ?まぁ、いいか。

「…っ、なんだい、いきなり」
「いや、したくなった」
「ガキか。っつうか甘い、信じらんねえ」

げろ、と赤い舌を出す凌統。お前こそガキか。こいつは馬鹿なんじゃねえかと俺は密かに疑っている。こうやって何度も俺を煽るあたりとかな。

「っふ…ちょっと、甘寧」
「甘ぇ」
「は?そりゃあんたでしょうが」
「甘ぇな、凌統」

じいっと見つめると凌統は目を丸くして唇をきゅっと結び、ほんの少しだが照れを見せた。なんだろうな、俺もこいつも立派に男だけどよ、こいつだけはべったべたに甘やかしたくなるんだよな。可愛いっつう表現が当てはまるかは分かんねえが、俺はいたく凌統がお気に入りで、無条件で可愛がり甘やかしたくなる。しょうがねえか。なんたって甘いもんには目がねえんだよ俺は。

「凌統、甘いもんが足りねえ」
「…あっそう。そりゃ残念なこって」
「足りねえんだよ、凌統」
「〜っ」

耳元で囁くと凌統は今度こそ顔を赤らめて照れを全面に出した。そんなカワイイ凌統とは違い、べたべたに甘やかし、おまけにべたべたに甘えている俺は恐らく相当に気持ち悪ぃんだろう。知るか。どうせ凌統にしか見せねえし、関係ねえだろ。だがそんな俺を甘やかすのはやっぱり凌統で、じっと見つめていると向こうからカワイイキスが降りてきた。

「お前よ、今度甘いもん食ってみろって。多分ちっとは食えるはずだぜ」
「はあ?わけ分かんねえっつうの…いいから、こっち」
「おう」

甘い甘い凌統のキスとやり取りを享受しながら、俺はひそかに笑ってみせた。やっぱ俺、甘いもんには目がねえわ。やめらんねえ。誰にともなくそう宣言してから、俺は凌統との行為に耽っていった。


【甘いものには目がないの】
何度だってたべたくなっちゃう!
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