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09 いざ、

「じんじょーに勝負!」

尋常だ、尋常。
ちゃんと発音しやがれ。
そう言うと目の前の酔っ払いもとい凌統はむっとしたように眉を寄せた。
ああ、こいつって酒飲むと人格変わるんだよな。
精神年齢が如実に表れてるっつうか。
こいつ普段大人ぶってっからな、ウンそうに違いねぇ。

「人の揚げ足取って楽しいかい?いーから、じんじょーにしょーぶだっつの!」

悪化しやがった。
何をそんなにこいつが燃えているのかというと・・・
目の前に置かれている木製の盤、そしてこの白黒の石で察してほしい。
こういう手合いのモンは苦手だったが、こいつと何年もいれば自然と少しは上手くなるもんだ。
んで、まぁ勝っちまったわけだ。
俺としてもさすがに嬉しかったぜ、ちゃんと考えて打ったしな。
だが凌統がさっぱり面白くないらしく、酒を飲みに飲んで今に至るわけだ。

「だいたいあんたが勝つなんて絶対おかしい、ぜぇーってえおかしい!」
「なんとでも言え。だからもう寝ようぜ・・・」

俺はこんな遊びで朝陽を拝むつもりはねぇぞコラ。
だがもう少しでそんな時間だろう。
柵の奥が曙がかっている。

「一戦やるなら寝てもいいぜ」
「そうきたか・・・もしまた負けても泣くんじゃねえぞ」
「はん、言ってな!さぁっ」

どれだけ悔しかったんだてめぇは。
そう言いたかったがまぁ闘争心を持つことは(多分)いい事なんだろうしよ、
それに俺も意外と満更でもねぇから、いいかって気になっちまう。

「いざ、尋常に勝負!」

こいつの真剣な目、嫌いじゃねえから。



でもやっぱり朝陽をみるなら
イイことさせてほしかったぜ。


【いざ、】
出発のあいず
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