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12 闇鍋はいかが?

「甘寧いるかい」

ガラ、と無遠慮に戸を開ける。
その中の人間、俺のお目当てさんはと言うと見慣れない執務中の姿でぶすっとしていた。
そんなに執務が嫌いかね、まぁじっとしてるのは性に合ってないでしょうけど。

「凌統・・・どうにかしてくれや。つうか手伝いに来てくれたのか?」
「冗談。てめぇの仕事はてめぇでやれっての」
「かっわいくねえ・・!」

可愛くなくて結構。
てかあんたが大人しく物書きしてる姿なんか滅多見れないし、面白い。
どっかり座ってそれを見ていてやろうと思ったのに、甘寧はふと何かに気がついたらしく俺の方を振り返った。
まぁ、そりゃバレるわな。

「・・・ものすげえ独特な匂いがするんだけど、凌統さんよ」
「あははやっぱり分かっちゃうよねー。ホラ」

ドン!と背後に隠していた鍋を置く。
まだ蓋は開けていないが、匂いが漏れていて甘寧はう、と声をもらした。
うんうん、そんなに楽しみだなんて嬉しいねえ。

「俺もねたまには料理なんざしてみようかなって思ったんだよねー。
ほらあんたは作るのうまいししょっちゅう食わせてくれるじゃん?
あんたはまだまだ先遠そうだし、夜はこれからだしねー、鍋物にしてみたよ、ちょっとアレンジも加えてさ!
あれなんだよ甘寧その顔は」
「べらべら喋んな・・・匂いとそれで頭いてぇ」
「そんな時こそ滋養強壮だよ、甘寧。ほら!」

ぱかっと蓋を取るとそりゃもう芳しい香りが立ち込める。
甘寧はうげ!と失礼な叫び声を上げている。
鍋汁の色はどんより黒い、っていうか青い?
うーん俺もどうしてこんな色になったかは分かんないだけどね。

「て、てめぇ俺を殺す気か!?来るなら武器で来やがれ!」
「あんた何言ってんの?あれあれ、あまりの感動で涙?感激っつの」
「うぜえ!うわっ、何サジ近づけてんだこのタレ目!!」
「はい。あーん」

そう言ってサジを甘寧の口にぶち込んだ直後、ぐおおという声が聞こえた。
ぶくぶく泡吹いて倒れる甘寧。


滋養強壮、しすぎたのかねえ。



【闇鍋はいかが?】
明るいところでつくったのに
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