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17 満天下(この世に満ちていることまたは世の中全体)


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星がちらつく、晴れ渡った夜。
一通りほとぼりの冷めた俺は凌統の部屋に向かった。
戸を開けると、すやすやと心地よく眠る姿がある。
その姿に妙に安心しちまって、思わず舌打ちが出た。

こんなに早く、こいつを認める予定はなかった。
そもそもこいつから行動しなければ俺から想うことなんか有り得なかった。
愛とか、そういう重苦しいのはなるだけ軽い相手に想うことにしてたんだよな。
重い感情を、重い相手にしても、面倒くせえだけだぜ。

今まさに俺はそんな状況に飛び込もうとしてるんだろうか。・・・だろうな。
正直、こいつは悪くねえ。
ツラは整ってるし、そこそこ好みだ。
考え方なんかも、ちと冷めてるが女々しいのよりは好きだと思う。
そして、殿に絶対を尽くす、その忠誠心も気に入っている。
まぁ俺が好きだったっつーのは予想外だけどな。

だが、過去が重すぎた。
俺もあいつもしでかしたことは消せも忘れも出来ないくらい、デカかった。
だから俺はそれをどうにかあがいて忘れようと、あいつを極力避けるようにした。
と言うより、何か少しでも特別な感情を持つのを止めた。
まるで普通のやつのように見、扱った。

予防線というやつだったのかもしれない。
本当は一番意識してたんだろうな。
必死で隠してたなんでアホみてえだ。むしろそのものだ。


「お前が頑張っから、気付いちまったじゃねえか・・・・」


疲れ果て眠る凌統の瞼に唇を押し当てる。
もうきっと明日からは、抑えることなどできないのだろう。
この想いがどこまで広がるかすら、分かんねえ。
この胸の内で消え果てるのか、それとも奴にまで届くのか。
それともいっそ、満天下にまで広がるのか・・・
それはそれでおもしれえかもしれねーな。
今まで避けてた分、いっそそうして重くすれば余計にこいつを愛しいと思うかもしれねえしな。

「本当、お前って、なんなんだろうな・・・」


凌統の手ェ握りながら、俺も眠りに落ちた。


【満天下】
どこまでも侵食して


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