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25 よせあつめ根性

どんなに自信とか実力とかよ、持ってたって駄目な時もあんだよな。
運ってやつは最強だと思う。
一歩間違えば、少しでも運が悪ければ、命を落とす。
今はそんな時代だ。

「ははっ、絶体絶命って奴か・・・面白ぇじゃねえか」

どうも左肩が上手く回らねえ。
さっき強打したときに骨がいっちまったのかもしれなかった。
だがんなことは関係ねえ。
腕は肩より上には上がらねぇが少しくれぇなら上がる。

「甘寧を討て!」
「おお!」
「させっかよ!」

武将が三人ほどいるのか、そいつらが統制する兵もまた三人分だ。
囲まれるのは正直しんどい、っつうよりは厳しい。
だが俺はこんな所で果てたりしねえ。

少なくとも悲しむ奴がいるのを、俺は知っている。

「ったくうざってえな・・・ごちゃごちゃしやがって!」

刀をひと薙ぎすればそれだけで一体何人を斬るのか。
多分息の根までは止めらんねえが、とりあえず少しでもこっちに向かってくる数を減らせりゃそれでいい。
俺の部下はおそらく外側からこの敵を崩してくれているんだろう。
時々、士気をあげるために出された怒声が聞こえる。

それにしたってこの人数を相手するのは骨が折れる。
さすがの俺も、だんだん気持ちが悪くなってきた。
血の匂いとむせ返る人の熱は、士気を削る。

だがそれでもまだ俺は死ぬわけにいかねえ。
根性かき集めてでも生きなきゃなんねえ。
少しでも粘ってりゃ、その内道は開ける。


「興覇!今行くから死ぬんじゃねえぞ!」


な?
その声を聞いて俺は落ち込んでいた士気が起き上がるのを感じた。
最後、寄せ集めた根性は活路を開く。
これ以上なく大切な凌統の笑顔を見て、もう負けねぇと思った。


【よせあつめ根性】
あつめれば あなたに会えるから
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