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37 All agree. (P)



*学パロ3年生設定

10月っつったら何があっかな。体育の日。あ、オクトーバーフェストは熱いな。行きてえ。ドイツ遠いよな。あとは…ハロウィン?去年の凌統のパンプキンパイ美味かったな。また今年もやってんのか?10月、もう思いつかねえや。

「甘寧…俺の話を少しは聞いておったか?」
「ようおっさん!今日もヒゲが濃いな」

もやもや下らねえ妄想をしているとぬっと目の前に現れたのは呂蒙のおっさん。俺たちの担任。いきなりむさい顔近づけんなよと内心思いながら返事をする。おっさんは呆れたんだか怒ったんだか知らねえが黒板をばんばんと叩いた。んだよ。

「説明させるぞ甘寧」
「構わねえけどよ、それ階差数列だろ?n≧2の制限つけねえと進まねえんじゃねーの」
「くっ…!」

おっさんは悔しそうな顔でチョークを持ち、続きを黒板に殴り書きしていく。それでも字は読みやすいし式も合っているところを見てやっぱ教師だよなと妙に感心をした。おっさんとのやりとりを終えた俺は再び授業とは違うところに気をとばす。ふと、つい窓列一番後ろを見やってしまった。

風にさらりと伸びる茶けた髪、太陽を浴びてなお白くすべすべとした肌。そして授業なんてまるで聞く気がないように伏せて眠る、そんな凌統の姿。それが今はもう見られない。一瞬だけ見えた幻想は、本当に一瞬で散り、地味なクラスメイトが代わりに目に映った。すぐに外す。凌統でなければ映す意味はない。

うっかり理系クラスに進学したために、分かってはいたが凌統とは別クラス。もう半年も経つが俺の中ではまだしっくり来ず、たまにそっちをちらちらと見てしまう。クラスメイトには悪いが、俺だって無意識だ。仕方ねえだろうが。

そんなことをしているうちに昔から聞きなれたチャイムが鳴り響く。昼は好きだ、凌統に会える。こんな馬鹿みてえにべたぼれでどうすんだと、曹丕に言われたばかりだってのにな。

「甘寧どの、行きましょうよ」
「おう」
「授業中、何を考えてらしたんです?凌統どののことですか?」
「…いや、10月って何があったかなってよ」
「へえ、めずらしい」

陸遜がくすりと笑う。同じクラスになってから前より話すようになったが、陸遜は気楽でいられる存在で正直凌統のいないつまんねえクラスの中では救いだった。

「オクトーバーフェストなんか好きそうですね」
「はは、お前すげえな。そう思ってたんだよマジで。ドイツビールってうまいのか?」
「どうでしょう?向こうは水よりビールが安いって言いますしね。あ、でもチェコ土産のピルスナーは美味しかったですよ」
「ウルケルか?苦ぇけど飲みやすいって言ってたな。って、学校でする話じゃねえけどよ」
「あはは、それもそうですね」

年齢的にアウトな話で盛り上がって並んで歩いていると前方に姜維と凌統を発見する。文系クラスは遠い。

「よっ甘寧!ちゃんと勉強したかい?」
「そりゃこっちの台詞だアホ。50分ちゃんと起きてたのかあ?」
「あはは、珍しく起きてたよ。大嫌いな数学なのにね〜?」
「…姜維に監視されてる気がして最近寝れねえんだっつうの」
「さすが伯約どの。諸葛亮先生の前では親友を操ることなど楽勝ですね」
「もちろん!丞相のためなら、凌統を売ることも厭わない!」
「いやいやっ、何断言してんだっつの!…甘寧、あんたは何笑ってんだい?」

下らねえが、俺はやっぱこいつがスゲェ好きで、こいつらがスゲェ好きなんだと、こういう瞬間に思っちまう。はは、だせえ。だけど、悪くねえ。

「いや、お前ら面白ぇなと思ってよ」
「はあ?」
「あ、凌統どの今日す●屋行きましょうよ」
「えーなんで?行く行く」
「ほらね、甘寧どの」
「はは、アホだ」
「はあああ!?なんだっつの」

三年になって部活が終わり暇が増えてきた(と同時に受験勉強もあるが)俺らは最近馬鹿みてえに一緒にいる。それがたまらなく楽しい。凌統は誘えばどこにでも付いてくるアホだし、姜維もそれに合わせてくれている。そして気付けば曹丕の野郎もどっかから聞きつけてやってくる。自由で気兼ねがなくて、なのにいつまでも飽きねえこいつら。俺はガラにもなく感謝してんだぜ?

「今日休み時間に、凌統どのはオールアグリーだって話をしてまして」
「All agree?大賛成?どういうこと?」
「まぁ、なんでもノリで賛成しちまうイメージっつうか」
「確かに凌統はそんな感じだよね」
「…オールアグリーで何が悪いんだっつの」
「あっ認めた上に拗ねた」
「姜維てめぇ鬱陶しいんだよ!」

いつもどおり騒いで食う飯はうまいし、つまんねーとか思ってた学校生活とかいう奴はおもしれえしで、今の俺は最近の言葉で言うリア充だった。そうだな、俺もこいつらといれるならオールアグリーでいいかもしれねえ。

「くそ…甘寧、あんたも行くんだろ。行こうぜす●屋」
「Yeah, all agree.」
「!」

耳元で囁いてやれば真っ赤になる凌統。それを見て笑う俺、何言ったんですかと同じように笑って言う陸遜に、相変わらず毒づいてからかう姜維。いつまでも変わんねえでいてえな。ほんとガラにもなくそう思った。

「陸遜、凌統ん家でオクトーバーフェストやるか」
「あはは、オールアグリー。曹丕どのに仕入れてもらいましょうか」
「へえ、ドイツビール?私もぜひ飲みたいな」
「伯約どの〜、そういう時は?」
「オールアグリー!」
「ちょ、ちょっと!なに?なにが?俺ん家で何が!?遊ぶのかい?」

三人そろってAll agree.をハモらせて、俺たちは馬鹿みてえに爆笑していた。


【All agree.】
異論なんてありません



※未成年の飲酒は禁じられております。笑
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