執事様の書棚
□天に拳を突き上げて
3ページ/8ページ
反射的に払い退けた筈の手の平が、再び私の額を覆う。
――乙女心が分からないってのも程があるでしょうが!
「離してってば!」
「うーん…熱はねぇから、やっぱ腹減りか」
なっ。ベル坊!
んなう!
親子で頷き合うと、ぐるんと私に顔を向けてきた。思わず、逃げ出したくなる凶悪面。
「邦枝ぁ〜。早く行こうぜぇ〜」
一瞬怯んだ隙に、ガシリ。と手首を掴まれた。
「お、男鹿っ!?」
痛くはないけれど、強く引っ張っていく彼の腕。
「ほら。引っ張ってやっから…しゃんとしろ!」
「分かった!分かったから…離してよ!私、ベルちゃん抱っこしてんのよ!」
「はっ!ベル坊を馬鹿にすんなよ。抱っこされてなくても、落ちたりなんかしねーよ」
「ダァウ!」
「だから…お前は、ちゃんと付いて来い!」
彼の言葉に、腕の中の赤ん坊が私の制服の胸元をしっかりと握り締める。それを確めた彼は足を速める。リーチの違う私は、もはや軽く走る程の速度だ。
「ちょ…男鹿っ…!」
速度を緩めて欲しい――そう頼もうとした。すると。
「あー、帰りにお前に会えて良かったぜ」
――え…?
「このまま、お前に会わずじまいになるとこだった」
「なっ!?なななななななに、言ってっ!?」
顔が熱い。心臓が痛い。足元がフワフワする。頭の中が――彼の声で反響する。
「あのよ。オメーに言わなきゃなんねぇ事があんだ」
「な、に…?」
彼の足が止まる。ゆっくりこちらを振り返った彼は、微笑んでいた。
「男鹿…」
「邦枝。俺と――」
私の手首を捉えたまま、彼は告げる。
「――明日の休み、一緒に図書館行ってくれねぇか?」
――うん。やっぱり男鹿よね。お約束よね。
期待なんてしてないけど、ほんのちょっぴり夢見て何が悪いの?――私の涙がちょちょ切れそうよっ!
「お袋によ、図書館でベル坊の本を借りて来いって言われてよぉ。
頼む。付き合ってくんね?」
はあっ…。
「コロッケ奢ってやっから」
あぁ…夕陽が目に染みるわ…。
「…仕方ないわね。付き合ってあげるわよ。光太にもちょうど良いし」
「助かったぁ…!オイ!ベル坊も礼を言え!」
「ダァァウ!」
正直。どんな理由であれ、彼と二人――+αでいられるなら嬉しくないわけがない。
――もちろん、言わないけど。
「おし!じゃあ明日、約束な!
…って、何かデートの約束みたいだな?ついでに、映画も見に行くか?」
――弄ばないで!乙女心ォォォォッ!!
「男鹿ーァ!アンタ、何言ってんのっ!」
「アハハ。ガキ二人も連れてたら、デートじゃなくて家族のお出掛けか!」
私は――今、何で、刀を…せめて木刀を持ってないのか後悔していた。
「男鹿の馬鹿ァァァァッ!」
〜fin〜
あとがき。
初のべるぜSSです♪
レンタル見てたら、つい書きたくなった男鹿葵です☆
これもコミックスは、持ってないんですけど…結構好きなんです(o^∀^o)
さらさらの黒髪の美少女で強い。って良いですね♪
後、古ラミも好きです(≧ε≦)☆
.