弦の刻の書棚
□日が綴るカンタービレU
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to香穂子
先日は、写真をありがとう。
いい写真だな。どの君も、綺麗に写っていた。
この絵葉書を求めた時に、ちょうどいいアルバムを見つけたので、折をみて整理しようと思う。だが、一枚一枚思い出を振り返りながらになりそうなので、時間が掛かりそうだ。
懐かしい…なんて、まだそんな月日は経っていないのにな。
…香穂子。
そう言えば、そちらではもう新学期だろう。くれぐれも無茶はしないように。
さすがに、ウィーンからはフォローは出来ない。
〜from〜
「――『月森 蓮』…って、月森くんてば私の事、一体何だと思ってるのよ?」
香穂子は、月森からのエアメイルを読み終えると、ぷうっと頬を膨らませ、手許にある問題の絵葉書を睨み付けた。けれど――。
「元気そうで良かった…」
それも一瞬。月森直筆の文章に香穂子は、ほっ。と一息吐いた。そして表情を弛め、絵葉書を裏返す。裏面には、切り取られた街並。
――そこが、今、彼がいる場所。
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