執事様の書棚
□お嬢様のお気の召すまま
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〜崩壊へのプレリュード〜
ぎぃ。
懐かしくもない、古びた金属音をたてて扉を開ければ、実に見事な殺風景な部屋が主を迎え入れた。そこは、出掛ける前と何一つ代わり映えしない…と思っていたが、ひとつ、余分な『モノ』が置かれていた。
すうっ…。
――それは、静かな呼吸音で寝台に横たわる侵入者。
「何にしてやがんだ…コイツ」
神田は、団服を脱いで適当に寝台に放り投げると、自らもそこに腰を下ろす。
ギッ。と、振動する寝床。だが、健やかに眠る不届き者に、目を覚ます気配は一向にない。
「おい」
――ん…。
返ってくるのは、寝息ばかり。
神田は、無造作に髪を掻き上げ、深い溜め息をひとつ吐いた。
確かに、自分の不在時に部屋の管理を任せたが、まさか寝こけられるとは思ってはいなかった。彼女の――ミランダの性格上、他人の寝床でこんな大胆不敵な事をするなど、予想すらしない。
――疲れて果てて、眠り込んだのか…?
ただ、想像はできる。
今朝方早くに、任務完了の報告を教団に入れたのを訊いたのだろう。
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