執事様の書棚

□お嬢様のお気の召すまま
2ページ/4ページ



〜崩壊へのプレリュード〜






ぎぃ。

懐かしくもない、古びた金属音をたてて扉を開ければ、実に見事な殺風景な部屋が主を迎え入れた。そこは、出掛ける前と何一つ代わり映えしない…と思っていたが、ひとつ、余分な『モノ』が置かれていた。

すうっ…。

――それは、静かな呼吸音で寝台に横たわる侵入者。

「何にしてやがんだ…コイツ」

神田は、団服を脱いで適当に寝台に放り投げると、自らもそこに腰を下ろす。
ギッ。と、振動する寝床。だが、健やかに眠る不届き者に、目を覚ます気配は一向にない。

「おい」

――ん…。

返ってくるのは、寝息ばかり。
神田は、無造作に髪を掻き上げ、深い溜め息をひとつ吐いた。
確かに、自分の不在時に部屋の管理を任せたが、まさか寝こけられるとは思ってはいなかった。彼女の――ミランダの性格上、他人の寝床でこんな大胆不敵な事をするなど、予想すらしない。

――疲れて果てて、眠り込んだのか…?

ただ、想像はできる。
今朝方早くに、任務完了の報告を教団に入れたのを訊いたのだろう。





⇒NEXT

.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ