若旦那の書棚
□軌跡を数えろ
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【喪失の幸福】
「ただいま帰りましたぁー」
と一言掛ければ。
「お帰りなさい。新ちゃん」
「お帰り〜。またオタクって来たかぁ〜?」
「ヤダ…。オタクが移るからうがいするまで、話しかけるんじゃネーヨ」
三人分の返答があった。
(…神楽ちゃん。オタクは移らないから。風邪じゃないから)
「今日はハンバーグでーす♪」
「きゃっほーい。肉アル肉!」
「アラ?お肉なんて買う予算あったんですか…?」
「…残念ながら、おから。そんで、賞味期限明日の値引き鶏が申し訳程度入ってるだけだ」
「えー。豚肉じゃないアルかぁー?」
「でも、美味しいしヘルシーだわ」
僕が作ってないのに、食卓に可哀想な卵焼きがない。
(おろしポン酢で美味しく頂きました)
『お妙ェ〜』
「ヤダ、銀さんったら。バスタオル忘れて行っちゃったんですか?」
「姉御ォ〜。アイス食べて良いアルか?」
「御風呂から上がったらね」
御風呂が順番待ち。
(今日は、一番風呂を頂きました)
「神楽ちゃん。もう寝たら?」
「此の後は、韓流ドラマネ」
「もう、目ェ開いてねーだろ。大人しく寝ろ」
「じゃあ姉御と一緒に寝るネ」
「お妙は俺と、今から一杯やんの」
「ぶー!銀ちゃんズルいネ!」
全員が、姉上御手製の半纏を着用。
(…………………)
「って、オイィィィィィィィィィッ!!何でアンタ等我が家の様に寛いでんの?居座ってんの?」
僕の絶叫に、三人は吃驚した表情を僕に向けてくる。
…確かに唐突だったのは認める。でも、可笑しいだろ?此の家は、僕と姉上の家の筈だ。なのになぜ!天パ上司とチャイナ同僚がいるんだ?
「オイオイ。ばっつぁん…どうした?オタクと眼鏡と真面目特有の発作か?」
「アンタ…オタクと眼鏡と真面目に喧嘩売ってるんですか…」
「どうしたの?新ちゃん。蒟蒻の買い置き…切らしちゃってた?」
「んだよ。其れくれェならコンビニ行け。
あっ。お妙」
「はいはい。神楽ちゃんを御布団に連れて行ったら直ぐ持ってきますから」
「アネゴォ…眠いアル…」
「あらあら」
「ちっ…しゃあねぇなぁ…。神楽は、俺が連れてくから」
「お願いします」
「ちょ…」
「しー。神楽ちゃんが起きちゃうわ」
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