若旦那の書棚
□詩は風に乗せて
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‐Seven Nights‐
「綺麗な星空ですねぇ…」
と見上げてみれば、雲一つない満天の星。今夜は、朔月だったと思い出す。昨晩も一昨晩も、薄い月は早々に沈んだので、此れまた中々の星空だった。
「旨い飯が鱈腹食えて星が綺麗だと、ナンも言う事ないネ!」
正しくそうだ。本当、最近は良い事尽くしだ。
楽な依頼が多けりゃあ報酬も良い。其の金の一部を持って玉転がしに行けば、大当たり。景品を抱えて家路を辿れば、彼方此方から御裾分け。
偶々寄った飯屋も旨かった。
絶好調と言う言葉は、まさに今、遣うに相応しい。
――だが。
「新八ィ〜。今日、お前ん家行っても良いアルカ?」
「良いけど…今夜も姉上いないよ?」
「ええっ!?また仕事アルカ?働き過ぎヨ!」
「そうだね。人手不足だからしょうがないって言ってたけど、自分の身体も大事にして欲しいよ…」
折角手に入れた美味い酒も、手酌じゃ半減する。
ちっ。と舌打ち一つして、軽かった足取りを落とす二人の後をのそのそと追った。
ぽつり。
冷たさを覚えて見上げれば、曇天から雫が滴り落ちる。手元に傘はない。あれよと言う間に濡れ鼠。
本当、ツイてない。
昨日も一昨日も濡れた。其の前日は、強風に煽られた看板が激突した。川にも落ちた。財布も落とした。
トドメに。
「まあ。バイクで転んだんですか。余所見でもなさってたんですか?」
能天気に笑われた。ずぶ濡れ傷だらけの身体と心が、無情に抉られる。
――其れでも。
「ウルヘー」
「御愁傷様です。自業自得でしょうけど」
「放っとけ」
「ちゃんと拭いてから上がって下さいね。あっ、御風呂沸いてますからどうぞ」
迎えられると、心踊る。
能天気なのはどちらやら。甘い声に、どん底で御機嫌だ。
「ちょっと早いですけど、銀さんが御風呂から上がったら晩酌しましょう」
…嗚呼。やっぱり酒は、酌して貰うに限る。今夜は、美味い酒が呑めそうだ。
盛大にくしゃみをして、汚いと罵られて風呂場に向かう。ぶるり、と身体が震えたが、口許はだらしなく弛んだ。
「後は、キスの一つもありゃあ…完璧なんだけどな」
其れはまた、別の話――。
了。
あとがき。
銀妙SSでした(o^∀^o)☆
題材は、某有名歌アニメ7の挿入歌です。歌詞の内容は、結構まんまです。
『どんな良い事があっても、《おまえ》がいなけりゃあどんな夜も味気ねぇ。
どんな悪い事があっても、《おまえ》がいりゃあどんな夜もゴキゲンだ』
ってな感じです。
『何度バイクがコケたって』って歌詞で、つい銀妙を連想です(笑)♪
残念ながら、最近のシリーズは知らない…と言うか、この7しかまともに見た事ないですf´_`;
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